結社-10

 長四郎と燐は、難波塚児の自宅へと訪れた。

 自宅は世田谷区の住宅街にあり、フリーライターだからなのだろうか。都内の一軒家にしては小金持ち程度が住む家の大きさであった。

 長四郎は「ああ、小金持ちの家なんだな」と思いながら、家のインターホンを鳴らす。

 インターホンの向こう側から「はい」と返事が返ってきた。

「あ、探偵の熱海です~」と営業スマイルでインターホンのカメラに顔を映す長四郎。

「今、開けます」

 桑子はすぐに玄関のドアを開けて、長四郎と燐を家の中に招き入れる。

「今日はどのような御用で?」桑子は二人をリビングに案内しながら用件を尋ねてきた。

「いやね、旦那さんの浮気相手の正体が掴めそうにないんですよ」

「そうですか。警察の方もそう言っていました」

 桑子は長四郎のしょうもない用件の内容に答えながら、三人掛けのソファーに座るように促す。

 二人は促されるままソファーに腰を下ろして座る。

「それでなんですが、奥さんの友人が浮気相手との写真を撮影したんですよね?」

 長四郎のその問いに「はい。最初にお伝えしたように」桑子はそう答えた。

「でしたよねぇ~」

「あの、奥さんはご主人が麻薬組織と繋がっていたっていう事は知っていましたか?」

 燐がド直球な質問をぶつける。

「麻薬? まさか。まぁ、職業がフリーライターですから、そういった世界の人達と関わりはあるかもしれませんけど」

「そうですか」燐は悔しそうに下唇を噛む。

 すると、インターホンが鳴った。

「ちょっと、すいません」

 桑子はそそくさと玄関に向かう。

 そして、重そうなホライゾンの箱を抱えて部屋に戻って来た。

「手伝いましょうか?」

 長四郎が尋ねると「お願いします」と桑子は長四郎に箱を受け渡す。

「あ、結構、重い」長四郎は少し動揺しながら、「ここに置いてください」桑子にキッチンカウンターの上に置くように指示をされた長四郎は指示通り届いた荷物を置いた。

「ありがとうございました」

「いえいえ。それじゃあ、僕らはここいらでお暇します」

 燐と桑子は思わず、「もう帰るの」と言い出したくなったが口には出さなかった。

 燐は一体、ここに何しに来たんだと思っていた。そのまま、家を出た二人。

「ラモちゃん。至急、絢ちゃんに連絡してくれ」

 家を出た長四郎はすぐさま燐に頼む。

「何、急に?」

「良いから、呼んで」

「チッ!」

 舌打ちをして、絢巡査長に連絡した。

「あ、それと鑑識の人も連れて来るようにって、伝えといてね」

「はい。はい」

 燐は長四郎が何を考えているのかも分からず、苛立ちながら返事をするのだった。

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