結社-11

「長さんが着ていた服から麻薬が検出されました」

 絢巡査長は鑑識結果を伝える。

「どういう事?」燐は眉をひそめながら、長四郎に理由を尋ねる。

「ふっ、大馬鹿者め。あの箱の底を見ていなかったな」

「底? 奥さんが持っていた箱は普通のホライゾンの箱だったじゃん。うん? ホライゾン。あ!!」

「今頃、気づいたか」

 長四郎は嬉しそうにニヤリと笑う。

「長さんの考えている事、言いましょうか?」

 絢巡査長の提案に長四郎はどうぞと言わんばかりの顔で「どうぞ」と手を差しだす。

「奥さんは、ホライゾンから麻薬を受けとった。そう言うことですよね?」

「That’s Right.(その通り)」

「じゃあ、麻薬取締法違反で逮捕できるじゃん」

「そうか。ラモちゃんは見ていなかったな。宛名を」

「宛名?」

「そう、宛名。アメリカから来ていた」

「でも、税関で引っ掛からないの?」

「ラモちゃん、そこが厄介な部分なの。アメリカから今回の情報がきたのは一週間前。一応、税関にも話は言っているんだけど、きっちりとした対策までは・・・・・・・」

「そうだったんですか」

「だから、しらばっくられて逃げられる可能性が高いな」

「そ、そんな事分かっているし」

「ホントかなぁ~」長四郎は訝し気な顔をしながら、燐を見る。

「ホントよ」

「ま、私達はこのまま捜査を続けますけどね。奥さん、マークしましょうか」

「そっちは俺らがやる。絢ちゃんはサポートを任せるわ」

 長四郎の提案に「はい」とだけ返事をする絢巡査長。

「取り敢えず、奥さんの素性を洗ってくれる?」

「私達はこれからどうするの?」

「そうだなぁ~」

 長四郎が思案していると、命捜班の部屋のドアが開く。

「長さん、浮気相手の足取りが分かって来たばい」そう言いながら、一川警部が部屋を入って来る。

「おおっ、こちらは奥さんの方で収穫がありましたよ」

 長四郎から先に自分達が得た情報を共有した。

「ほほぉ~ 奥さんも大胆な事をするもんやね。麻薬付きの箱を長さんとラモちゃんの前で受け取るやなんて」桑子の行動に感心する一川警部に「一川さん。そんな吞気に言わないでください」と窘める絢巡査長。

「絢ちゃん、ごめん。ごめん」

「一川さんが得た情報を教えてくれませんか?」

 眉間に皺を寄せて質問する燐を見て「あ、はい。只今」と一川警部は話し始めた。

「難波塚児さんが殺害されて、浮気相手は逃げるように現場から、そうさなぁ~30m程離れた飲食店に逃げ込むように入ってね。ほとぼりが冷めるまで水一杯で居座って出て行ったらしい」

「ほぉ~ そこからの足取りは?」

「長さん。よう聞いてくれました。実はそこから順に防犯カメラの映像を手当たり次第に当たっていった結果、家まで突き止める事が出来ました!」

「気持ち悪い」

 燐のドストレートな発言を呟くと一川警部はガクッと肩を落とす。

「ラモちゃん。ストーカーみたいって言いたいのはよく分かるけど、それが仕事だから」

「知っていますぅ~」舌を出しながら反論する燐。

「で、その女は今、何を」

「一応、知り合いの所轄署の刑事に張り込みしてもらっとうけん。時期に連絡が来るとう思うったい」

「了解です。時間も良き頃ですし、飯でも食いながらこれからどう捜査するか。打ち合わせしません」

 そう進言する長四郎の視線の先の時計は夕方の六時を示していた。

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