対決-5

「おっ、お〜」

 長四郎は大欠伸をしながら、身体をソファーを起こす。

「あり?」

 起きてすぐに長四郎は、違和感を覚えた。

 何故なら、身に覚えのない場所に自分が居たからだ。

「あ、起きた?」

 聞き覚えのある声がしたので、ゆっくりとそちらの方を向くと燐がキッチンで朝食を作っていた。

 昨晩、燐に見つかった後、美味しい中華料理に舌鼓を打ち、勇仁と飲み明かした後、酔いつぶれた大人二人を燐が勇仁の家に連れ帰ったのだ。

「あれ、ゴミ部屋ではないな。ここ、どこ?」

「お爺様の家よ」

「ああ、通りで綺麗だと思った」

 長四郎がそう言った瞬間、長四郎の横を包丁が通り過ぎていき壁に刺さる。

「何か、言った?」

「いいえ、何も」

「それより、朝ごはん出来たからお爺様を起こしてきて」

「はい! 喜んでぇ!!!!」

 威勢のある居酒屋店員のような返事をした長四郎は、勇仁が寝ている寝室へと向かった。

 寝室に入ると、ジュークボックスが置いてあった。

 長四郎は部屋に置いてあったコインをジュークボックスに入れ、スイッチを押して曲をかけ始める。

 陽気な曲が部屋に流れ始めると、勇仁がベッドから起き上がる。

「ふあ〜あ」

 背筋を伸ばして欠伸をする勇仁は、寝ぼけた顔で長四郎を見る。

「粋な起こし方をするな。長さん」

「どこら辺が粋なんだよ」

「でも、いい夢だったなぁ〜」

「どんな夢?」

「世界一の美女をものにする男が居るんだよ」

「その男から美女を奪うのが勇仁って話だろ?」

「惜しい。美女をものにするのが俺なんだよ」

「それは、それは」

「ねぇ、くだらない話していないで降りて来て。朝ごはん冷めちゃうから」

 長四郎に投げた包丁を片手に持った燐が二人に促す。

 男二人、気をつけして「ファイ(ハイ)!!!!」と元気よく返事した。

 三人は燐が作った朝ごはんを食べる。

「いや〜 日本に帰ってからの楽しみは燐の手料理」

 勇仁は嬉しそうに胡瓜の浅漬けを口に入れる。

「お爺様。それ、市販品です」

 燐のその言葉に、勇仁はガクッと肩を落とす。

「孫の手料理の味が分からなくなるようじゃボケてきたんじゃない?」

「そ、そんな事ねぇ〜し。て言うかさ、長さんの方こそ、内の孫とイチャイチャしてるんじゃないのぉ〜」

「どこがだよ。あれ、見てみろよ」

 長四郎が壁に目を向け、勇仁も長四郎の視線に合わせて壁を見る。

 そこには、包丁が刺さった事による穴が空いていた。

「あ〜 壁に穴がぁ〜」

「これで、分かったろ。俺達の関係性が」

 長四郎は溜息混じりに、味噌汁を飲む。

「あ、ああ。よく分かった」

 勇仁はそう答えながら、白米を口に入れる。

「で、お二人さん。今日はどこに行くご予定ですか?」

「ど、どこって・・・・・・」勇仁は困った顔で長四郎に助けを求める。

「ど、どこ行こうか・・・・・・」

 長四郎も困った顔で返事する。

 燐には今回の事件について、まだ喋っていなかった。

「怪しい」

「怪しいって。ラモちゃんは学校があるでしょうが」

「そうそう。学校があるある。お爺様命令。学校に行きなさい」

「分かりました」

 燐は不服そうに返事をしながら、白米をかきこむ。

「行ってらっしゃ〜い」

 長四郎と勇仁は声を揃えて、学校へ行く燐を送り出す。

「さ、俺たちも行動を開始しますか」

「OK.」

 長四郎と勇仁は小上が殺害された横浜へと再度、向かった。

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