対決-4
テストを終えた燐は、憂さ晴らしの為に熱海探偵事務所へと向かった。
入口の前に着くと、事務所のドアに「只今、外出中」という札が貼ってあった。
「ふっ、私に居留守は通用しないのに」
燐はそう言ってドアノブを回すと、鍵がかかっていた。
「ほぉ~ 私にはとっておきの兵器があるのにな。アホな奴め」
カバンの中からキーケースを取り出し、事務所の鍵をドアノブに差し込み鍵を開ける。
「フフッフフフ」
ゆっくりとドアを開けて、事務所の中に入るとシーンっと静けさがあり長四郎はこの場に居ない事はすぐに分かった。
事務所のソファーに腰を下ろした燐は、スマホを手に取ると長四郎に電話を掛ける。
しかし、電話に出ない長四郎。
「助手を放置して、どこで遊んでるのかなぁ~」
燐はGPSアプリを起動した。
そこには長四郎の位置情報が表示されていた。
「横浜ぁ~ 浮気調査かな?」
燐はすぐさま、長四郎にメッセージを送る。
だが、返信は返ってこず、二時間が経過しようとしていた。
二時間、事務所のテレビを垂れ流しながらスマホゲームをしていたが飽きたので燐は行動を起こす事にした。
「お~」長四郎は身震いする。
「長さん、どうしたの? 海風にやられたか?」
長四郎と勇仁は、山下ふ頭に来ていた。
「いや、違うと思う。多分、お孫さんが動き出したかも」
「燐が? でも、有り得そうな話だな。ここに居ちゃマズイかもな」
「ああ、そうだな。中華街にでも逃げよう」
「そうしよう」
男二人の意見は一致し、中華街に移動した。
そして、二人は中華街の適当な店に入り食事をする事にした。
料理が来るまで、事件についての話をする長四郎と勇仁。
「で、長さんの見立ては?」
「トカゲのしっぽ切りだな」
「だろうなぁ~ 塚川って野郎は逮捕されてラッキーだったな」
「言えてる」
「それで、奴らの言い分は何だった訳?」
「腐った政治を正す為にうんたらかんたら言ってたな。確か」
「政治」
「アメリカでは違うのか?」
「全然、違う。向こうは環境保護だ」
「環境保護?」
「そう、環境保護。FBIの調べだと活動内容は各国任せらしい」
「じゃあ、日本でも頭がすげ変われば、活動内容が変わるのか」
「FBIの言う通りだとな」
「はい、生ビールでぇ~す」
片言の日本語を話す中国人店員が机の上に生ビールを置いて厨房に戻っていく。
「よしっ、乾杯!」
二人がジョッキを酌み交わすと、「うっ、ううん」という咳払いが聞こえたので、長四郎と勇仁は恐る恐る声の方を向くと燐が立っていた。
「ハっ、ハァ~イ」
声を揃えて挨拶する二人に「ハァ~イ」と答える燐はニコニコ笑顔で制裁を加え、店内に男二人の絶叫が木霊するのだった。
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