愛猫-7
一方、一川警部達は所轄署に戻り防犯カメラ映像のチェックを進めていた。
「手掛かりなさそうですね」
絢巡査長は目元を抑え、隣でチェックする一川警部に話し掛ける。
「そうやね。ここまで手掛かりになりそうな人物が居らんとなると範囲を広げないといけんばい」
「そうなりますよね。それにしても、長さん何処に行ったんでしょう?」
「あたしにも分らんたい。でも、長さんの中で何かが引っ掛かったやないと」
「引っ掛かるですか。あの横乃海って人、素直に被害者と揉めていたこと話しましたよね」
「絢ちゃんもやっぱり気になったと?」
「はい。発言からしたら犯人なようですけど。でも、不思議と犯人でもないような気がして」
「そう思うんやったら、そうやないと」
「そんな簡単に決めないでくださいよ」
「ま、長さんの出方を見ましょう。それまであたし達はこれで手掛かりを追いましょ」
「はい」
絢巡査長は次の防犯カメラ映像を手に入れる為、近隣の店舗へと向かった。
翌日、長四郎は1人でNPO法人ペガサスを訪ねた。警察関係者と勝手に勘違いされたので、それをうまく利用し話を聞けることになった。
応対してくれたのは、
「猫谷についてですよね」陣内から話を切り出してきたので「そうです。しかし、聞きたいのは「CATエモン」の運営についてです。店舗拡大の話があったらしいですが、それはどのような経緯で?」
「それはですね。というより、それが事件に何か関係しているんですか?」
質問を質問で返す陣内に、長四郎は「何ともいえないですが、可能性を探るだけなので気にしないでください」と笑顔で答えた。
「成程。経緯としては、我々が保護する猫達も年々増加していてまして、ここだけじゃ飼育出来ないんですよ。勿論、里親も募集していますが引き取って行かれるのは1匹が基本ですから追っつかないのが現状なんです。「CATエモン」があるとはいえ店舗の大きさも決まってますから猫達を全てというわけには」
「そういうことでしたか。ですが、好江さんはその事に反対されていたとか」
「店舗拡大については反対ではないんですよ。「CATエモン」の半分の猫を新店舗に異動させて、「CATエモン」に新猫達を入れようと計画していたんですけど。彼女は店の猫達が混乱するし、慣れるまで時間がかかると言って反対していたんです」
「そうでしたか。これは別の事なんですけど、猫が特定の人間を見て威嚇したりすることってあるんでしょうか?」
「猫も生き物ですから。好きな人間もいれば苦手な人間もいます。ここに居る保護猫達も全てが人間に友好的ではないんですよ。特に保護したばかりの猫は」
「勉強になりました。ありがとうございます」
「いえ、店の猫が危害を加えましたか?」
「いえいえ、そんな事は無いんですけど。ちょっと、変な事がありまして・・・・・・」
長四郎は、陣内に好江の彼氏が訪れた時の猫達の反応を伝えた。
「それは珍しいですね」
「ええ。横乃海さんも同じ様な事を言っていました」
「尚道が暴れていた事が驚きですよ。尚道もここに来たときはやんちゃだったんですが、猫谷が世話をしてからというもの噓のように大人しくなったので」
「じゃあ、あまり見れない場面を見れたんですね」
「そういう事になりますね」
「最後に良いですか?」
「はい、何でしょう?」
「好江さんの交際相手を知っていたようですが、面識はあったんですか?」
「ええ、まぁ。彼もこの活動に興味を示してくれましてね。そこから、彼女と交際するようになったんじゃないかな。詳しい事は知りませんが」
「そうでしたか。あの人、何も語ってくれなかったので」
「はぁ」どう返答して良いのか分からず、曖昧な反応をする陣内。
「あ、すいません。長々と話を聞いてしまって」
長四郎はそう言いながら席を立つ。
「こちらこそ、お役に立てなくて」
「そんな事は。あの、入口に置いてあるパンフレットを貰っても?」
「どうぞ。お持ち帰りください」
陣内に許可を貰った長四郎はパンフレットを1枚手に取り、ペガサスの事務所を後にし好江の交際相手の夜田が勤務する会社へと向かった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます