愛猫-8
長四郎が夜田の勤務する会社・ニッポンポンが入る商業ビルに訪れると入口で燐と出くわした。
「何で、ここに居るの?」長四郎がそう尋ねると「気になったから」それだけ燐は答えてビルに入って行く。
「絶対、嘘だな」
長四郎はそれだけ言うと、燐に続いてビルに入る。
夜田の会社は、商業ビルの最上階にオフィスを構えていた。長四郎達は社長室へと通された。
「お待たせしました」
会議を終えたばかりの夜田が部屋に入って来た。
「いえ、いえ。こちらこそ急に押しかけてしまって」長四郎が申し訳なさそうに軽く頭を下げた。
「それで犯人が逮捕されたんでしょうか?」
この前とは打って変わって、やたらと飄々とした表情を見せる夜田に違和感を覚える長四郎。
「いいえ。事件に繋がるような話がないかなと思いまして、何かないでしょうか?」
「そうでしたか。でも、好江が恨みを買うようなことはなかったかと」
燐の質問に涙を流しながら答えることもなく、すっと答えた夜田。
「夜田さん、「CATエモン」の運営に支援をしていたという事は無いですか?」
「いえ、していませんが」
「そうですか。では、ペガサスの運営ではどうです?」
「募金という形では、支援していますけど。それ以外はしていないです」
「ですよねぇ~」長四郎はつまらなさそうに返事をし、部屋をきょろきょろと見回す。
「あの店の運営に問題があったんですか?」
今度は夜田から質問をしてきた。
「いや、それは・・・・・・」返答に困った燐は隣に座る長四郎を見る。
「問題はないですよ。多分」
長四郎は適当な返事をして、再びきょろきょろと見回し始める。
「あの、この部屋が何か?」
「いえいえ、ここに来る前に御社の事を少し調べたんですよ。ネット情報ですが」と長四郎は前置きし「1年前までは、町工場に事務所を置いていたんですよね?」と問いかけた。
「ええ、そうです。父の会社に席を置かしてもらっていましてね。丁度、1年前に軌道に乗りましてここに移転したんです」
「凄いですね。でも、かなりお金を使ったんじゃないですか?」
「ええ、まぁ」
「しかし、ここまで大きくする為にはそれなりの取引先があるという事ですよね?」
「さっきから何の質問をしているんですか? この事が、事件に繋がるんですか?」
夜田の問いに燐も同意見であった。
「そうですね。こんな他愛もない会話から何か事件を紐解く鍵があるかもなんで、そんな怒らないでくださいよ」
「別に怒っては」
「すいません。お気を悪くしたようで、私達、もう帰ります」
燐は長四郎の頭を掴んで頭を無理矢理下げさせ、社長室を後にした。
「なんで、途中で切り上げるの?」
ビルを出た長四郎は真っ先に燐に問いかける。
「あんたが、あの人を怒らせるからよ」
「キレてないですよ。俺をキレさせたら大したもんだ。って言ってたじゃん」
某プロレスラーのモノマネを交えながら反論する長四郎。
「いいや、あれは怒ってた。全く!」
「で、ラモちゃんは気になった事解決できた?」
「できたわよ。一応」そう答えるの燐の顔は、明らかに嘘をついている顔であった。
この数ヶ月、燐と共に行動をし燐が嘘をついている時の顔が読めるようになっていた。燐が嘘をつく時は、黒目が少し上向くのだ。
だが、長四郎はその事を口には出さず話を続けた。
「具体的には?」
「それは・・・・・・」言葉に詰まる燐に「言いたいことは分かる」と謎のフォローをかまし長四郎は次の目的地へと向かって行った。
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