彼氏-6

 燐は四郎のスマホに仕込んでいるGPSアプリを基に、長四郎ガ居る所へ来た。

 そこは日向が居るスタバであった。燐はサクラソイラテを注文し、長四郎を探す。

 長四郎は寒空のオープンテラス席でスマホをいじっているように見せ、対象を監視しているようであった。

「よっ! お待たせ」

 燐が意気揚々と長四郎に声を掛けると「うわっ!!」と驚きの声を上げ長四郎は椅子から飛び上がる。

「何で驚くわけ?」

「驚くだろぉ~恐怖の大王が来たんだから」

「恐怖の大王?」

「あっ!」長四郎は自身が失言した事を自覚し、口元を手で押さえる。

「ま、良いわ。それより調査の方はどう? 順調?」

「順調じゃありません」

「ダメじゃん」

 燐の事を無視し、長四郎は再びスマホに目を落とす。

「何? 見てるの?」

「子供が見ちゃいけないアダルトなもの」

「最低っ」

「フフフ。それが狙いさ」

「キモっ」

 罵詈雑言を燐から浴びせられるも、そんなのお構いなしでスマホを見続ける長四郎。

 そして、対象の日向はというと。

 日向もまた長四郎と同様、店内でラテを飲みながらスマホを操作していた。

「あれが、リリの彼氏かぁ~でも、いまいちね。そう思わない?」

 燐は日向をまじまじと見つめながら、長四郎に話しかける。

「・・・・・・」

「無視かよ」

 それでも返事をせずに、長四郎はスマホに見入っている。

「そんなに集中して見るものな訳?」

「見るよ。ラモちゃんは、バレないように監視して」

「ちょっと、どうして私があんたの手伝いしなきゃいけない訳」

「・・・・・・」

「もうっ!!」

 燐は長四郎の右肩に肩パンし、監視の任につくのだった。

 監視の任を任せた長四郎が見るスマホには、再び更新され始めたtwitterが映っていた。

 今度の呟きは、「講義終了後、近くのスタバでアルバイト中。リンクの楽に稼げる株式投資をチェック」の文字の下にでかでかと株価のレートが映っているノートパソコンの写真が添付されていた。

 勿論のことだが、日向が居るテーブルの上にはノートパソコンはなく、ひたすらスマホをいじっている。

 長四郎はその証拠を押さえるべく、その現場を写真撮影する。

「あのさ、中に入らない? 寒いんだけど」

 燐はスカートから出している足を擦りながら長四郎に尋ねる。

「入れば良いじゃん。誰も止めないよ」

「でも、監視しろって」

「いや、別に監視しなくても良いのに」

「何それぇ~私がバカみたいじゃん」

「だって、バカじゃん」

「あ~ん。私がバカだって言ったかぁ~はぁ~ん! その顔に穴開けて二度とでけぇ口叩けねぇようにしてやろうか!はぁ~ん」

 燐は長四郎の胸倉を掴み、面血をきる。

「ラモちゃん。気づかれる! 気づかれるぅぅぅぅぅぅ」

 長四郎の説得? も空しく恐ろしい制裁を受けるのであった。

「うっ、うっ」長四郎は怒られた子供のように涙を拭う。

「泣いても許さないからね」

「そこは゛ゆ゛る゛さ゛ん!! だろ?」

「あーはいはい。対象が店を出るわよ」

 燐の言葉通り、日向は店を出ようとしていた。

「追うぞ」

 長四郎はそう言うと燐を連れて、尾行を開始した。

 歩き始めて間もなく燐が話かけてきた。

「ねぇ、あいつは結局の所、詐欺師だったの?」

「その質問には答えかねます」

「何でよ! 私、依頼人の友達なんだけと」

「だから、教えろってか。やな、こった」

「マジ、ムカつく」

「おう、ムカつけ。ムカつけ」

 そう嫌味を言う長四郎のスマホに通知が入る。

 それは、日向がtwitterを更新した事を知らせるものであった。

 長四郎は確認する為、一度立ち止まりツイートの内容を確かめる。

 その内容は「これからバイトの講習会だりぃ~」と言うツイートであった。

「急に止まってどうかしたの?」と聞いてくる燐に「尾行続行」とだけ告げ、長四郎は日向の尾行を再開するのだった。

 そうして、辿り着いた先は秋葉原にある一軒の雑居ビルであった。そこには、長四郎と同様にビルを睨み付ける怖い顔をした男が2人張り込んでいたのだった。

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