彼氏-11
「ねぇ、どうして燐が居るわけ?」
そう切り出したのはリリであった。
「あの探偵が心配だから、ここに来たの。それじゃ、ご不満?」
「ウソ。好奇心で来てる癖に。バレバレなんだけど」
リリのその言葉に長四郎はその通りだと思いつつ、2人のやり取りを見守る。
「失礼ね。あんた、あいつに良いように扱われているのが分かんないの?」
燐はリリに直球をぶつけると、リリの顔はみるみる鬼の形相へと形態変化していく。
「あんたさぁ、自分に彼氏が居ないからってやっかむの止めてよ」
「やっかむって。ふざけんなよ。私はあんたの為を思って!」
「何が私の為よ!! 探偵さんからも何か言ってください!」
ここで話を振られた長四郎は「え? そうね。ラモちゃんに関しては、リリちゃんの言う通りだよ」と言う。
「ちょっと!!」燐のツッコミを無視し、長四郎は日向の話を始める。
「でも、彼氏さんについてはねぇ~あまり、良い感じな話はないかな」
「探偵さんまで、燐の味方するんですか?」
「そこに関しては、味方も敵もないから。恋は盲目状態のリリちゃんにはかなり耳の痛いお話になるけど。それでも良い?」
「やっぱり、燐の言う通り詐欺師だったんですか?」
「そうね。でも、本業ではなくアルバイトで詐欺を働いているってところかな」
「そうですか。分かりました。ありがとうございました!」
リリはそのまま事務所を出て行った。
「いやぁ~殴りあいに発展するのかと思って、おじさん冷や冷やしたわ」
長四郎が壮絶な修羅場にならず胸を撫で下ろす。
「そうじゃないでしょ。追いかけなきゃ」
「ラモちゃん。宜しく」
長四郎は1人、事務所を出て行った。
「というわけで。俺、1人という事なんです」
円山美歩の部屋へと場所を移した長四郎は、一川警部と絢巡査長に事情を説明する。
「大変やったね」と労をねぎらう一川警部に「ありがとうございます。それで、この部屋の住人が殺されてたんですね?」と事件の話を切り出した。
「そうです。刺殺でした。未だに犯人に繋がる手掛かりはない状態です」
絢巡査長が現状の捜査状況を長四郎に伝える。
「手掛かり無しか。捜査本部としてはどの線で捜査している状況ですか? 一川さん」
「あらゆる可能性を考慮して、捜査しとるばい」
「成程。じゃあ、強盗、通り魔とかも視野に入れている訳ですか?」
「強盗に関しては部屋を見ての通り荒らされていませんし、金品も持ち出された形跡はありませんでした」
「ああ、そうなんだ。じゃあ、通り魔若しくは痴話喧嘩のなれの果てか・・・・・・」
長四郎は部屋をきょろきょろと見回し、「同棲感はないな」と呟いた。
典型的な女の子の1人暮らしの部屋と言う感じであったからだ。
「ま、男は連れ込んでいたのかな?」
長四郎はソファーの下に身体を半分入れて、何かを取り出した。
「それって」
「男子御用達のボクサーパンツぅ~」
某猫型ロボットの口調で絢巡査長に手に持つ品名を答える長四郎。
「鑑識さん、ソファーの下を調べとらんかったようやね。はいたぁ~」
一川警部は、自分の頭をペチッと叩く。
「ま、これが誰の物なのかは大方、想像つきますがね」
長四郎はそう言うと、ニヤッと笑うのであった。
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