海外-13

 ミシェルが捕まえたのは、男二人、女一人の男女三人だけだった。

 そのうちの一名は、自称幹部の男。

「これで、リイルの無実に一歩近づいたわね」

 自称幹部の男を見下ろしながらミシェルがそう言うと、ティッシュを鼻に詰め込んだ長四郎がミシェルの肩をポンポンと叩く。

「何?」

「多分、近づいていない。と言うより、動きが読まれすぎてる」

「それはそうでしょ。敵組織の情報網は凄いんだから」

「プッ」ミシェルの言葉に思わず、吹き出してしまう長四郎。

「何が、おかしい訳?」

「いや、悪い。普通はさ、内通者がいるって思うじゃん」

「内通者? まさか」

「じゃあ、確かめよう」

 長四郎はスマホに話しかける。

「お前は、この男を知っているか?」と。

 英語に翻訳された文と共に、ある人物の写真を自称幹部の男に見せて問うた。

 自称幹部の男は、少し目を逸らし「I don’t know.(俺は何も知らない)」とだけ答える。

「知っているのが、バレバレ」長四郎はそう言いながら、自称幹部に見せた写真を見せた。

「まさか・・・・・・」

 ミシェルは長四郎のスマホに映ったデモンの姿に絶句するのだった。


 燐は一人、デモンの尾行をしていた。

 長四郎の知り合いの調べからデモンの自宅を割り出し、燐は早朝からデモンが住むマンションの前で張り込み、デモンが出勤の為に家を出た所から尾行を開始した。

 デモンの通勤は車通勤ではなくバス通勤であった為、尾行は燐でも可能だった。

 尾行されている事に気づいていないデモンは、普段通りお気に入りの曲をヘッドホンで聴きながら出勤する。

 燐はスマホに目を通すふりをしながら、デモンの行動を録画していた。

「今のところ、異常なしか・・・・・・・」

 残念そうな顔をしながら、デモンの行動をどこかの国の首相並みに注視する。

 警察署最寄りのバス停で下車したデモンはその足で、自身の職場へと入っていった。

 燐も警察署内までは尾行できないので、近くのコーヒーショップに入店してデモンの出方を待つ事にした。

 それから、二時間経ってもデモンに動きはなく警察署内で事務作業でもしているようであった。あまりにも退屈なので、そろそろ警察署に入ろうかと思っていると、長四郎とミシェルが店に入ってきた。

「よっ!」

 長四郎は軽い感じで挨拶し、燐が座るテーブル席に着く。

「で、どうだった?」

「いきなり、結果かよ。デモンは組織の人間らしい」

「ふーん。そうかぁ〜 こっちに異常はないよ」

「左様ですか」

 そんな長四郎と燐の会話に入る事はせず、ミシェルはデモンに裏切られたと言う事実を受け入れられないようで下を向きただ落ち込むしかなかった。

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