話合-6
長四郎は燐を連れ立って、DEEPな町・歌舞伎町へと来ていた。
「なぁ、この町はガキが来て良い町じゃないんだけど」
「そんな事ないし。聞くけど、あのゴジラは何なのよ!! お子様でも楽しめるようになっているんじゃないの?」
今や新宿歌舞伎町のシンボルとなりつつあるゴジラ像を指さし、燐は説明を求める。
「ラモちゃんさ、龍が如く知らないの?
あれ、知っていたらここがどんだけ恐ろしい町か分かるんだけどな」
「知るか、うんなもん」
燐は長四郎の助言? 的なものを無視し、闊歩していく。
因みに、この歌舞伎町に来た目的としてはサンデーの浮気相手に会いに来たからだ。
勿論、情報源は珠子さんである。
「お姉さん、お姉さん。どこの店で働いているの?」
黒スーツを着たスカウトマンが、燐にスカウトをかける。
「どこの店って・・・・・・」
燐が戸惑っていると長四郎が助け舟を出す。
「あ~こいつは埼玉くんだりのブス専の店に勤めているから、無理」
「え!? ブス専なわけないでしょう。こんな可愛い娘」
スカウトマンのこの言葉は、お世辞でもなんでもなかった。
燐の容姿は芸能界のスカウトマンが声を掛けてもおかしくないほどの美形の顔そして、スタイルもまたグンバツなのである。
こんな事を書いているとフェミさんから、いやらしいとか言われるんだろうなぁ(筆者談)。
「そ、そんなぁ~」燐は顔を赤らめ照れる。
「何、照れてんだよ。行くぞ」
「あ、うん。スカウトしてくれてありがとうございました」
燐はスカウトマンにウインクして、先を行く長四郎の後を追う。
燐のウインクの衝撃にやられたスカウトマンは、放心状態になるのであった。
そうして、長四郎と燐はお目当てのキャバクラ・Don’t Touchに入店する。
店内は開店準備のため、ボーイが忙しそうに店内を駆け回っていた。
どのタイミングで話しかけようか長四郎が迷っていると。
「すいません。まだ開店前なのですが・・・・・・」
2人に気づいた1人のボーイが声をかける。
「俺達、客じゃなくてこういう者です」
長四郎は一川警部の名刺を渡す。
「警察の方ですか? 当店にどのような?」
「実は、このキャバクラに勤めている
ここの常連でかつ子猫さんに夢中だとお聞きしたものですから」
「はぁ、分かりました。こちらでお待ちください」
ボーイは、店を仕切るオーナーに話をつけに行く。
オーナーの許可を得たのか、子猫を呼びに店の裏に入って行くとすぐに子猫を連れて出てきた。
子猫は30そこそこといった感じで、若い子に負けないようにと無駄に若作りしている感じの人物であった。
しかし、長四郎は若作りしない方が綺麗なのにと内心思う。
「何? 私に聞きたいことって」
気だるそうに話す子猫。
「ニュースでも見られたと思いますが、サンデーさんいや、昇風 遊平さんがお亡くなりになりました。
それで、何かお話を聞きたいと思いまして参った次第です」
「ふ~ん、でも話すことなんか何もないよ」
「それ、どう意味ですか?」
燐が説明を求める。
「だって、半年前に別れたから」
「えっ! 別れた!?」
素っ頓狂な声を上げ燐は驚く。
「そうだけど」
「失礼ですが、原因は?」
「知らない。でも、向こうから別れ話を切り出したから承諾した」
「そうですか」
長四郎は何となくだがその理由は察せたので、これ以上聞くことはないので帰ろうと思った。
「あのどうして、どうしてなんですか?」
まるでゴシップ記者の如く子猫に問い詰める燐。
「おい、いい加減にしろよ。
我々は、これで引き揚げますので」
「そ」と一言だけ返す子猫。
「行くぞ、新米」
燐にそう言うと、長四郎は店を出る。
「ねぇ、何で切り上げたのよ」
店を出て4,5歩離れたところで燐が長四郎の真意を聞く。
「何でって・・・・・・」
「普通さ、被害者と何があったか詳しく聞くのは常套でしょ」
「まだまだ、だな。彼女は半年前に別れたって言ってたろ。
だから、話を聞いても無駄」
「何でそうなるの?」
「はぁ~ったく、あの女と話して分からなかったの?
あのタイプは客前では男受けするキャラを演じて、実際のお姿はああいう気だるそうなタイプで家事も一切、やらないそういったタイプなの。Do You Understand?」
「それで、桂太郎君のお父さんと別れったって言うの?」
「多分な」
「でもそれさ、あんたの勘だよね」
「まぁねぇ~!」
「あんた、本当に探偵? 普通さ、あの場でもう少し踏み入ったこと聞くでしょ」
「そぉ? もしさ、ラモちゃんが原因で彼氏から別れ告げられて、別れた後に見知らぬ相手から原因を根掘り葉掘り聞かれて答えられるの?」
「そ、それは・・・・・・その時々によるかなぁ~」
「自分に別れる原因があるのにか?」
「そんな事ないもん!!」そう言って、長四郎の鳩尾にパンチを食らわす。
「ぐっ!!」
そのまま歌舞伎町の大通りに倒れ込む長四郎を見て隙が生まれ次第、スカウトをかけようとしていたスカウトマン達が一斉にその場から離れる。
「何すんだよ!」
「知るか! バ~カ!!!」
燐は倒れている長四郎を置いて歌舞伎町を後にするのであった。
一方、浅草署の捜査本部で事件解決の糸口が見えないので頭を抱えている一川警部の元に絢巡査長が勢い良く駆けつけてきた。
「一川さん! これ見てください!!!」
とある捜査資料を一川警部に見せる。
「これは?」
「今回の毒化合物が、過去に使用した可能性も考慮して鑑識に調べてもらうように頼んだらHITしまして」
「それがこの事件というわけね」
捜査資料をトントンと叩く一川警部。
「はい」
一川警部は早速、その捜査資料に目を通す。
6年前の夏、都内にある某高校で事件は起きた。
被害者は二年生の男子生徒で、体育の授業中に突如として倒れそのまま死亡した。
その時は、(元気百倍アンパンマン!!)のポーズで倒れたらしい。
当初は、事故若しくは突然死の線で捜査を進めていた。
被害者の血液検査をした際、今回の事件と類似した毒物が検出された。
殺人事件として、捜査を開始したのだが被害者に誰が毒を盛ったのか、入手経路も不明のまま迷宮入り事件となった。
「絢ちゃん、これ捜査員分のコピー取っといて」
「分かりました」
絢巡査長はすぐ様、コピーを取りに行こうとするのを「あ、待って」と一川警部は呼び止める。
「長さんの分も」
「分ってます!!」
絢巡査長はそう返事し、コピーを取りに部屋を出る。
「何もあんな言い方しなくてもさ」
部屋に残された一川警部は、しょぼんとしながらいじけるのであった。
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