将軍-3

「ここか」

 燐は事件現場へと来ていた。ここは渋谷の再開発地区の一角で、解体工事が完了しこれから再開発の工事が始まるといった場所であった。

 殺人事件が起き、今現在、この場所は人っ子一人居ない。そんな場所になっていた。

 燐は巡回している警備員に見つからないようにしながら、事件現場を探索し始める。

「ここで、殺されていたのか・・・・・・」

 燐は消された長四郎への挑戦状が書かれた壁を見ながらそう呟いた。

 ヒューと工事現場に風が吹き、燐は身震いする。12月の半ばを過ぎ寒さが一層厳しくなってきたので寒さが堪える中、燐はスマホのライトを点灯させ現場を探索する。

 ゆっくりとライトを地面に照らして、事件に繋がりそうな物を燐は探す。

 すると、燐の視界にパンプスが見えたと同時に「ラモちゃん。何してるの!?」と明野巡査が驚いた声を出す。

「泉ちゃん!?」燐も大きな声を出す。

「こんな所で何してんだ? 女子高生」遊原巡査は寒そうに身を縮こませながら質問した。

「何してるって。捜査に決まってるでしょ」

「お前なぁ~」呆れたといった顔をする遊原巡査に対して明野巡査は「どうやって、この場所を突き止めたの?」と注意するどころか自身の気になった事を尋ねる。

「泉ちゃん。それは企業秘密」

「大方、捜査資料を盗み見した時にでも住所を見て好奇心がてら来たってとこだろ?」

 遊原巡査のその発言は的を得ていた。光浦が長四郎に見せた捜査資料に事件現場の住所が記載されており、燐はそれを暗記してここへ来たのだ。

「ふんぐっ!」遊原巡査の発言に何も言い返せない燐は悔しさをにじませる。

「ラモちゃん。刑事でもないのにこんな所に居ちゃダメじゃない。さ、帰って。帰って」

 明野巡査が燐の背中を押して現場から追い出そうとする。が、燐も易々と引き下がるような魂ではない。

「泉ちゃん。そんなこと言って良いの?」

「どういう意味?」明野巡査は立ち止まってその言葉の意味を問う。

「いや、泉ちゃん達は捜査から外されているのに事件現場に来て良いものなのかねぇ~ っと思ってさ」

「うっ」痛い所を疲れて明野巡査は動揺する。

「何、動揺してるんだよ」遊原巡査のツッコミに「ど、動揺なんかしてないよ!」と答える明野巡査は動揺しまくりの声を出す。

「めっちゃしてるし」燐は肩を揺らして笑う。

「ちょ、ラモちゃん!」明野巡査は不服そうに抗議する。

「ま、怒るのは後にしてお互い除け者どうし、協力しようよ」

「それもそうだな」遊原巡査が握手を求める手を出すと、燐はそれに答えず明野巡査と握手を交わす。

「可愛くねぇ~」遊原巡査はそう毒づくのだった。

 こうして、徒党を組むことになった三人は事件の検証を開始した。

「ここに死体が置いてあった」明野巡査はそう言いながら、遊原巡査を死体が置かれていた場所に寝かす。

「おい!」遊原巡査は抵抗して起き上がろうとするが、燐が「言われた通りに!」そう言って遊原巡査を押し倒す。

「で、死体は顔を潰されており、指紋も焼かれていた」

「泉ちゃん。それマジ?」

「マジだよ。ほらっ」捜査資料のデータを燐に見せる。

「で、あの挑戦状か・・・・・・ この現場に何か手掛かりがあると思うんだよねぇ~」

 燐は長四郎の動きを真似るようにして、現場をきょろきょろと見回し始める。

「手掛かりね」明野巡査は燐を真似るように周囲を見回し始めると床に寝転がる遊原巡査と目が合う。

「ねぇ、これ何だと思う?」

 死体転がっていた場所から数メートル離れた隅の方でうずくまる燐が刑事二人意見を伺う。

 遊原巡査と明野巡査は燐が居る方へと移動し、燐の視線の先にあるものを見る。

「ドッグタグ?」

 そこに落ちていたのは、自衛隊などで使われる個人識別に使われるものであった。

 燐はそれを拾い上げ、書かれている名前を読み上げた。

「MITSURU SARARI」と。

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