結成-18
青山達が逮捕されて一週間が経った。
俺は依頼人・羅猛燐への報告書を作成し終え、燐が今日、事務所を訪れる予定であった。
改めて今回の事件の依頼を受けるんじゃなかったと思う。
推理というより、ごり押しで事件を解決した、そう感じだからだ。
そんな時、「よっ!!」という挨拶と共に燐が事務所に入って来る。
その姿は制服姿ではなく私服であった。
今日は平日、しかも登校日のはずだ。
放課後の時間を設定したのだが、家に帰って着替えるといった時間はないはずである。
「ねぇ? ラモちゃん。何で私服なの?」
長四郎は気になりすぎて真っ先に質問する。
「学校・・・・・・退学になった・・・・・・」
急にテンションを下げ暗い表情になる燐。
「なんで、退学になるの?」
「知らないわよ。校長の置き土産のおかげかな」
田中山校長は事件の揉み消しを図ったとして逮捕され勿論のこと校長職もクビになった。
「可哀想に」
「悲劇のヒロインって私みたいなことを言うのね」
「そんなことより、これ、いる?」
燐に調査報告書を見せる。
「それよりさ、なんで家宅捜索出来たの?」
長四郎の質問に答えず、燐から逆質問する。
「なんでって。これ一生懸命作ったのに・・・・・・」
「答えてよ。だって、あのノートを青山の家で見つけてもそれだけじゃ令状は取れないでしょ」
「それはだな、一川警部のファインプレーによる賜物かな」
菅刑事の杜撰な捜査に目を付けた一川警部は、監察に報告。
燐の盗聴がきっかけで監察が本格的に捜査し始め、青山父を介して賄賂を受け取っていた事実が発覚した。
それを口実に家宅捜索の令状を取れた。
こっそり、鑑識を同行させたのはここだけの話。
「というわけ」
「成程」
長四郎の説明に、燐は納得する。
「俺からの質問、退学理由は何だったの?」
長四郎も10年前までは高校生探偵として事件を解決したが、その活動を理由に退学処分になった事なんてなかった。
「まぁ、学校に不利益をもたらしたとか素行不良とかでクビ」
「そうか。素行不良は分かるけど不利益をもたらしたっていうのは酷いな」
「そう。って、どういう意味よ!!」
長四郎の発言に嚙みつく。
「そう、怒るなよ」
「じゃあ、もう行くね」
燐は事務所を後にしようとする。
「おい、待てよ」
呼び止められ燐はその場に立ち止まる。
「はい、これ。宜しく」長四郎は請求書を燐にサッと渡し、燐は恐る恐る書いてある額を見る。
そこには、\100,000 の文字が記載されていた。
「分割もOKだよ」
「ぐっ!!」
「じゃあ、支払い宜しく!!」
燐はその請求書をビリビリに破く。
「あっ、てめぇ!! 何するんだ!!!」
長四郎は破かれた請求書を慌てて拾い上げる。
「へっ!! 十八番の推理も披露してないのに10万は暴利だよ」
「そんな事ないもん!!!」
「それはどうかな?」
「どういう意味だよ」
「ごり押しで解決したように見えたけどな。私の目には」
「うっ!!」
長四郎は図星をつかれ怯む。
「図星と見たな。じゃ、そういうことで」
それだけ告げると燐は事務所から逃亡し、逃げ出した燐を涙目で追いかける長四郎だった。
完
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