大物-24

 港区六本木にある某高級マンションで長四郎と燐は、優雅な環境で平和的な夜を過ごしていた。

「今日はハードだったわ~」

 燐はすらりと伸びる綺麗な脚をマッサージしながら、今日の苦労を労う。

「ラモちゃんは学校に行っただけじゃない」

 そういう長四郎は、ノートパソコンで経費精算計算をしていた。

「学校も苦労するんだよぉ~ それよりさ、ここに光先生が居ること教えたんでしょ?」

「ああ、教えた」

「それで、接触はあったの?」

「あったって、先生は言ってたぞぉ~」春日部市在住の5歳児のモノマネをしながら長四郎は答える。

 そんな時、部屋のインターホンが鳴る。

「私、出る」

 燐はインターホンの応対ボタンを押して「はい?」と返事をする。

 モニターに映し出されている時刻は、午後11時。

「あ、Uberです」

「はい。今、開けます」

 燐はエントランスのロックを解除し、Uber配達員を中に招き入れる。

「こんな時間にUberって。何、頼んだのか知らんが太るぞぉ~」

「私じゃないし。先生でしょ?」

「そうなのか? 確認してこよう」

 長四郎は椅子から立ち上がり光議員が居る部屋へと移動する為、廊下へと出る。

 その時、玄関ドアが吹っ飛ばされ長四郎も巻き添えを受けて壁に叩きつけられた。じぃ~んっと痛む背中を擦りながら、ゆっくりと身を起こすと防護マスクをした男達が入ってきた。

「光希望はどこに居る?」

 防護マスクAに聞かれた長四郎は、自分が入ろうとしていた部屋を指さす。

「おい!」防護マスクAの指示で防護マスクB,C,D.Eが部屋に入って行くと同時に、

 長四郎は「修理代弁償しろっ!!!」と隙だらけの防護マスクAを殴り飛ばす。

 そして、防護マスク四人衆が入った部屋からも激しい物音が聞こえてきた。

「どうしたの!!」燐も物騒な物音を聞き、慌てた様子で廊下に出てきた。

「カチコミです。組長」

「カチコミ? ふざけたことしやがって!」

 楽しい事になってきた! っていう顔をした燐が床に倒れている防護マスクAの背中を踏んづけて激しい物音がする部屋へと入っていった。

 数分後、出てきた燐の姿は変わり果てていた。

 風呂上がりで、ドライヤーで綺麗にとかされた髪の毛は、まぁ、なんということでしょう。山姥のような髪型に。そして、着ていたお気に入りのシャツは、思いっきり引っ張られたのか、ヨレヨレになっています。

「た、倒したぞぉ~」

 防護マスクCの首根っこを掴んだ燐が、息絶え絶えに出てきた。

「お疲れさん」防護マスクAをクッション替わりにして座る長四郎が拍手しながら出迎える。

「長さん。こげん大変なら事前に言うといてくれんと」

 ゆでだこのように顔を真っ赤に染め上げた一川警部が姿を現し、「本当です。疲れた・・・・・・」絢巡査長も一川警部に続いて部屋から出てきた。

「三人共、お疲れ様でした。でも、良いでしょう。思いっきり、背中を打つよりは?」

「長さん、大丈夫と」ここで、長四郎の身を案じ始める一川警部。

「痛いですよ。ドア吹っ飛ばして入って来るんですから。この馬鹿どもがっ!」

 防護マスクAの頭を長四郎は思いっきり小突く。

「痛っ!」と防護マスクAが声を出し、「さ、あんたらには山ほど聞きたいことがあるけん。覚悟しとって」一川警部は満面の笑みで防護マスクAに話しかけた。

 防護マスクAは、苦虫を嚙み潰したような顔でそっぽを向き、長四郎に再び小突かれる。

「返事をせんか。返事を」

「は、はい」

「宜しい」と満足そうにする長四郎。

「ねぇ、こいつら捕まえたのは良いけど、これからどうするの?」

「まずは、裏切り者の粛清からだな」

「裏切り者?」燐が復唱した。

「長さん。その裏切り者って」

 ここまでの流れを知らない絢巡査長は、至極まっとうな質問をした。

「絢ちゃん。それは・・・・・・」

「それは?」

「それは・・・・・・ 次回に続く!!!」

「ダメだ。こりゃ」

 燐は呆れて物も言えないといった顔で、ガクッと肩を落とした。

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