返金-5
翌日、長四郎と燐は警視庁を訪れた。
「あたし達に、言われてもね」
頭をペチペチと叩きながら、困ったという顔をする一川警部。
「私の警察学校の同期に組対の知り合いがいるから、紹介しましょうか?」
団扇を仰ぎながら、絢巡査長は長四郎と燐に進言する。
「ありがとう。絢ちゃん」
「ありがとうございます」
「じゃ、お昼食べに行くついでに紹介しますよ」
絢巡査長は、スマホの通話アプリを開いて電話をかけ始める。
「あ、もしもし。なおっち。久しぶりぃ〜 今日、時間空いてる? うん。お昼でもどうかなぁ〜 と思って。あ、OK? じゃ、後でね」
長四郎と燐にアポイントメントが取れたのOKサインを送る。
「OKです」
「ありがとうございます。絢さん」
燐は深々とお辞儀して、礼を言う。
「そんな気にしないで。じゃ、行きましょうか」
「はい!!」燐は元気な返事をする。
「ねぇ、長さん。ホントに今回の詐欺事件を捜査する気?」
一川警部にそう問われた長四郎は首を横に振る。
「いや、組対の人を紹介してもらえれば良いだけなんで。嫌ですよ。怖い人達と揉め事を起こすのは」
「やっぱり、そう言うと思ったばい」
「そこのおっさん二人、何か文句でもあるの?」
燐から冷たい視線を向けられたおっさん二人はすぐに「文句なんてありません」と声を揃えて否定した。
「なら、宜しい」
燐は満面の笑みで答える。
かくして、絢巡査長に連れて行かれる形で長四郎と燐は警視庁近くの定食屋へと場所を移した。
「あ、俺は日替わり定食で」
席につくや否や注文を取りに来た定食屋の女将に長四郎は真っ先に注文する。
「えっ! 早っ!!」
あまりの注文の速さに驚く燐。
「はい。日替わり定食ね。お姉さん達は?」
「私も日替わり定食を」
「じゃあ、私も」
燐が告げると同時に女将は「日替わり三丁!!」と厨房に向かって言った。
「で、同期の子は婦警さん?」
「そうですけど。それが何か?」
「絢さん。気をつけてください。こいつがそう言う質問をする時はナンパしようと思っている時ですから」
「ラモちゃん大丈夫。彼女には、婚約者が居るから」
「チッ!」
女子二人に聞こえるぐらいの舌打ちをする長四郎。
「今、舌打ちした?」
「しましたね」
そんな会話をしていると、三人が座る席に目的の人物が立った。
「久しぶり。絢」
「久しぶりぃ〜 なおっち。あ、紹介しますね。こちら組織犯罪対策課の
「初めまして」
「初めまして。私、羅猛燐と申します。こっちは、私立探偵の熱海長四郎です」
「どうも」と連れない挨拶をする長四郎を他所に燐は話を続ける。
「あの、二、三お聞きしたい事があって絢さんに呼んでもらった次第です。あ! 席に座ってください」
「はぁ」
燐に促されるまま椅子に座る奈緒。
「それで、聞きたい事って何?」と奈緒の質問と同時に女将が「ご注文は?」と注文を取りに来た。
「日替わり定食で」
「はい。日替わりね。日替わりぃ〜」
「聞きたい事ですよね。実はこの会社についてなんですけど」
燐は途切れた話を戻しつつ、富有子が持っていたパンフレットを見せる。
「これ、どこで?」
そう質問する奈緒の顔が曇ったのを長四郎は見逃さなかった。
「はい。実は」
そこから日替わり定食を食べながら、今まで起きたことを全て奈緒に話した。
「ねぇ、そのメモ紙見せて貰える?」
奈緒にそう言われた燐は長四郎にメモを出すように、目で合図する。
「へいへい」
長四郎は机の上に、メモ紙を置いた。
「これは!」
奈緒はメモ紙を見ると、目を見開いて驚いた表情を見せた。
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