返金-6

「ねぇ! これをどこで見つけたの!」

 奈緒は物凄い剣幕で、燐に問い詰める。

「これは、え〜っと」

「このパンフレットに書かれている会社のファイルに入っていた」

 答えに困る燐に変わって長四郎がすんなりと答えた。

「という事は、盗んできたって事?」

 絢巡査長の問いに長四郎は黙ったまま頷いた。

「あ、でも、これを見つけてすぐに怖い人達が入ってきて」

 燐は盗んできた事を取り敢えず、誤魔化す為にすかさずフォロー入れる。

「怖い人?」

「はい。半グレみたいな人達が」

「そうでしょうね。関わっているのは、半グレだから」

 奈緒は苦々しい顔で言う。

 長四郎は先程から、奈緒が向ける敵意みたいなものが気になって仕方なかった。

「半グレかぁ〜」燐は顔を下に向け、敵とどう戦うか思案し始める。

「奈緒さんはさ、この犯罪って言うのかな。ま、そんな事はどうでもいいや。この会社を捜査しているの?」

「いえ、してません」

「あ、そうなんだ」

 長四郎は自分が抱いた違和感は気のせいだったのかと思う。

「長さん、何か気になる事でも」

「いや、何でもない。話を続けてもらって」

「この会社、詐欺事件として警察は捜査していないんですか?」

「してない。それより、さっきから気になっているんだけど、あなた達は何者?」

 奈緒から逆質問された燐は、その質問を待っていましたと言わんばかりの顔をする。

「聞かれて名乗るのも烏滸がましいですが、私達は、数々の事件を解決してきた名コンビ。女子高生探偵の羅猛燐and 助手の私立探偵熱海長四郎!! ですっ!!!」

 自信満々に答える燐を見て、唖然とする奈緒。そして、恥ずかしさのあまり手で顔を覆い隠す長四郎と絢巡査長。

 大人三人の反応を見て、燐は咳払いして凍った場の空気を取り直そうとする。

「ごめんね。奈緒ちゃん」

 長四郎にいきなりちゃん付けで呼ばれて、馴れ馴れしい男だなと思いながら「あ、いえ」と答える。

「ラモちゃん。このピシャリの事を聞かないと」

 長四郎にそう言われた燐は「あ、そうだった」と言ってスマホを取り出して、保存していたスレッドを開いて奈緒に見せた。

「このピシャリって、警察でも有名なんですか?」

「さぁ、調べてみないと」

 奈緒は知らないといった顔をする。

「ラモちゃん。今日のところは、引き上げよう」

「は? まだ聞くことあるし」

「そんなもんないない。帰るよ」

 長四郎は席を立ち、女将の所へと向かい四人分の会計をすまして店を出ていく。

「ありがとうございました。ちょっと、待ってよぉ〜」

 燐は女性刑事二人に礼を言い、長四郎の後を追う。

「ねぇ、絢。あの人達、この会社を調査するの?」

 燐が置いていったパンフレットを手に取り、奈緒は質問する。

「すると思うよ。あの女子高生の子は、こんな事で止まらないよ。なおっちさぁ、この会社捜査しているんでしょ?」

「うん、まぁ」

「じゃあ、何であの二人に、はぐらかすような答えしか言わなかったの?」

「実は・・・・・・」

 奈緒の事情を聞いた絢巡査長は、今回の事件は闇が深いということを痛感するのだった。

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