展示-7

 老人は化石コーナーで先程、聞き込みをしていた佃みのりと何やら話をしていた。

「にしても、凄いですね。ティーレックスの化石の標本は」

 長四郎は話をする2人にそう話し掛ける。

「おお、君はこの展示物の良さが分かるのか!!」

 急に大きな声を出して、長四郎に語りかける老人。

「ま、まぁ」

 長四郎はたじろぎながら、老人の問いかけに答える。

「ちょっと、亀津かめつさん」みのりが少し落ちつくように老人いや亀津を宥める。

「ああ、すまん。すまん。つい、大声を出してしまって」

 亀津は申し訳なさそうに長四郎と燐に謝罪する。

「いえ、気にしないでください。興味あることに関心を持たれるとテンションが上がるのは分かりますから」長四郎は亀津に同情する。

「あの、私達に何か用でしょうか?」

「あ、はい」そう答えた長四郎は、本題を切り出す。

「亀津さんはこの博物館の職員さんだったんですか?」

「いや、違う。常連客なだけ」

 長四郎の質問を一蹴する亀津に、ガクっと肩を落とす長四郎と燐。

「常連客。かなり愛着を持たれているようですね」

「そうだなぁ~ここには沢山の思い出があるから」

 亀津はそう言いながら、遠い目をする。

「思い出」

 長四郎は亀津が見るティーレックスの標本に視線を映し、思いを組むのだった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る