第拾弐話-監禁

監禁-1

「ふわぁ~わ」

 羅猛 らもう りんは大きなあくびを掻きながら、登校する。

 校門を潜り下駄箱に移動すると、普段にはない人だかりが出来ていた。

「何あれ?」

 野次馬根性を発動した燐は、その人だかりに近づいていく。

「失礼。失礼」そう言いながら、人混みを搔き分けて近づいていく。

 近づいていくうちにあることに気づく。

 そう、今進んでいる方向は自分の下駄箱がある方向であった。

 その為か、歩がどんどん進んでいく。

「ちょっと、どいて!」

 最後の一人を押しのけ、燐が辿り着いた先に立っていたのは友人の海部うみべ リリであった。

「りり。あんたここで何してんの?」

「あ、モテ期到来の燐だ」

「何それ?」

 燐の問いに答えるように、リリは燐の下駄箱から一枚の封筒を渡す。

「何これ?」封筒を受け取った燐は不思議そうにしながら封筒を開ける。

「よっ!! このモテ女!!!」

 リリの言葉にその場に居た全員が『よっ! このモテ女!!』と同調するように声を上げる。

 どうやら、ラブレターを下駄箱においておくという古典的な演出に今現在の若者達にとっては物珍しい事らしくこの様な人だかりが出来たという事らしい。

「あんたらねぇ~」

 呆れかえりながら、封筒に入っていた手紙を読む。

 燐は手紙を見るや否や、目を大きく見開く。

「どうしたの?」リリが顔を近づけ手紙を読もうとした時、同封していた写真が地面に落ちた。

「きゃあー!!」

 その写真を見たモブ女子高生が悲鳴を上げる。

 そこに写っていたのは、椅子に縛られ血まみれで顔を腫らした一川警部の姿であった。

 近くに居た生徒達も写真を見て驚愕するのに対して、燐は冷静に写真を拾い上げると手紙の内容と照らし合わせる。

「どうするの? 燐」

「うん。いたずらにしちゃ度が過ぎるからね。これ持ってあいつの所へ行く」

「分かった。担任には話付けとくから」

「宜しく」

 こうして、燐の忙しい三日間が始まった。

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