将軍-7
「別班? あんた、本気で言ってるの?」
燐は机に肘をついて長四郎の推理をふてぶてしい態度で聞き、鼻で笑った。
「可能性の話をしたまでだろ?」長四郎は不服そうに弁解する。
「にしても、突拍子もない話ですよ。探偵さん」
「泉ちゃん。朝飯食っている時は、目輝かせて食いついていたじゃない? ねぇ、遊原君」
長四郎にそう問われた遊原巡査はコクリと頷いた。
「別班はともかくとして、この次は誰が殺されるの? 第二の事件は専業主婦、第三の事件はコンビニ店長。犯人の目的は何だろう?」
燐は眉を眉間に皺寄せてう~んと考え込む。
命捜班・第二班の部屋のドアがノックされる。
「はい。どうぞ」明野巡査がドアの向こうにいる相手に居る旨を伝えると、ドアが開き一川警部が笑顔で顔を出した。
「お、やっぱり来とったね。良かった。良かった」
「一川さん、どうしたんすか?」
「長さん。吉報ばい」
「吉報? ですか?」
「そう。実はね、あたしら命捜班も正式に捜査に参加する事になったと」
「なんだ。そんな事か」
長四郎のその一言と同時に、その場に居た一川警部を除く全員がガクッと肩を落とす。
「そげん落ち込む事はないでしょう。捜査資料持ってきたのに」
一川警部は手の中にある封筒をパンパンっと叩いて見せる。
「お、見せてくれますか?」長四郎は一川警部から捜査資料を貰おうと手を差し出すと、燐がパシッと手を叩く。
「何すんのよ」
「これ、人数コピーしないとね。泉ちゃん、コピー機はどこ?」
燐は一川警部の手から封筒をひったくると、明野巡査からコピー機の場所を教えてもらい人数のコピーをして部屋に戻ってきた。
「では、始めましょう」燐が仕切り役となり、命捜班の捜査会議が始まった。
「第一の事件についてから行きましょう」
12月19日 午前7時 渋谷の再開発地区の工事現場で大手商社に勤務する更利満 35歳が失血死している所を現場に出勤した建築会社社員が発見した。
更利の顔は潰され指紋も焼かれており、身元が分からないようにして遺棄されていた。
死体の処理は死後に行われたもので、直接の死因はナイフを心臓に一突きされた事によるものであった。
「んで、次は第二の事件」燐の一言を受け、全員が資料をめくる。
第二の事件は田園調布の住宅街で起こった。
事件現場は住宅街の十字路の交差点の中央に死体が遺棄されていた。
被害者の身元はすぐに割れた。被害者は、事件現場から数十メートル先の豪邸に住む専業主婦・
「第三の事件」徐々に燐の元気がなくなっていく。事件が凄惨すぎて少し気分を悪くしていた。
「ラモちゃん。大丈夫?」明野巡査が心配そうに声をかけるが、その明野巡査も顔を青くさせていた。
「うん、大丈夫。続けるね」
第三の事件は、練馬区の住宅街にあるコンビニのバックヤードで起こった。
被害者はこのコンビニのオーナー兼店長の
「第三の事件は被害者の遺体を傷つけてないんだな」長四郎はそう感想を述べた。
「あ、確かに。第一、第二の事件では、遺体をその後に傷つけてはいるが第三の事件ではそれがない。何でだろう?」こめかみにペンを当てながら、遊原巡査は考える。
「それと気になるのは、第一の事件の被害者の身元が判別できないような事をしているだろ?」
「それは、あんたに身元が分かるかなっていう挑戦状を叩きつけたからでしょ?」
「だとしてもさ、第一の事件で俺が動いたっていう確証もないのに第二、第三の事件では被害者の身元が分かるようにしている。気になって仕方がない」
長四郎は親指を嚙み、自分の中にあるモヤモヤを収めようとした。
「第三の事件は、殺し方が違うのも気になりますね。それまでは、心臓を一突きだったのに」
「泉ちゃん。さしてそこは気にしてないから」
長四郎はぴしゃりそう言いい、明野巡査は少し落ち込むのだった。
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