将軍-8
「以上のことから、ゲネラールは常人では考えられない思考を持っていると推測されます」
警視庁の誇る事件のプロファイラーが捜査員に自身の見解を述べた。
「ありがとう。命捜班から報告はあるか!」
管理官の刑事が会議室の一番後ろに座る命捜班の佐藤田警部補と絢巡査長に声をかける。
「はいっ! 特にありません!!」
絢巡査長は椅子から立ちそう答えると 、「ないとはなんだ! ふざけているのか!!」管理官は絢巡査長を怒鳴りつける。
「すいません・・・・・・」
「もういいっ!! ったく!!!」管理官は悪態をつき、机を叩いた。
そんな怒られている絢巡査長の横で佐藤田警部補は大きな欠伸かくのだった。
「では、これから担当を発表する」本部長の光浦は自身が考えた捜査布陣を発表していき、最後の最後で命捜班の捜査するべき内容が発表される。
「最後に命捜班は、熱海とかいう探偵の身辺調査並びに監視。以上!」
刑事達は一斉に立ち上がり、大会議室を出ていく。
「佐藤田さん。私達、捜査に参加できるようになったんですよね?」
絢巡査長はムスッとした顔で捜査資料に目を通す光浦を見ながら、佐藤田警部補に話しかける。
「え? あ、うん。まぁ、良いじゃない。探偵さんのお目付け役だし。俺、少し寄るところあるから。あ、内の若いのは一川さんに任せるから。じゃ、宜しく」
佐藤田警部補は絢巡査長にそう言伝を残し、ふらぁ~っとどこかへ消えていった。
「任せるからって」
本当に掴みどころのないおっさんだな。絢巡査長はそう思うのだった。
「で、あんたはどうやってこのゲネラールと戦う訳?」
燐はすらりと伸びる長い脚を組み替えて、長四郎にお伺いを立てる。
「戦う。戦うねぇ~」長四郎は顎をトントンと人差し指で叩きながら少し考えてから喋り始めた。
「ま、ゲネラールの正体を暴かんことにはどうしようもないし。取り敢えず、ゲネラールの正体について追っていこうか」
「具体的にはどうするんですか?」遊原巡査が質問した。
「うん? 第一の被害者を洗おう」
「何で?」燐が説明を求める。
「調べれば分かるよ」とだけしか答えない長四郎の脛を軽く長い脚で小突く燐。
「くぎゅ~」
長四郎は弁慶の泣き所をやられて変な声を上げるのだった。
捜査会議から戻ってきた絢巡査長と合流し、長四郎、燐、絢巡査長、遊原巡査、明野巡査で更利の元勤務先である陸上自衛隊練馬駐屯地へと向かった。
事前にアポイントを取って居たので、陸上自衛隊の広報官が快く五人を迎え入れてくれた。
広報官に連れられグラウンドで訓練を励む自衛官達の元へ連れて来られてきた。更利について知る自衛官に話を聞くためだ。広報官は、訓練の指揮を執る自衛官に事情聴取にきた旨を伝え更利を知る自衛官を呼んでもらった。
「はい。何でしょうか?」30代半ばとは思えないぐらいはつらつとした自衛官はそう用件を尋ねてきた。
「更利満さんをご存知で?」長四郎が最初に質問した。
「ええ、知っていますよ。同期だった男ですから」
「彼がどんな人物かっていうのは、覚えている限りで構いませんのでお教え願えないでしょうか?」
「ええ、構いませんよ。そうだなぁ~ うん。あまり特徴のない男だったな」
「特徴のない男?」燐はマジで別班みたいな話になってきたと思う。
「はい、そうです。あまり写真にも写りたがらない男でしたね。俺たちの代は、事あるごとに写真を残すような中で、あいつはいつもカメラマンの役回りばかりしていた印象ですね」
「そうですか。人柄はどうでした?」長四郎は次の質問をした。
「悪い奴ではありませんでしたよ。仲間思いの。僕らは連帯責任で皆一緒に罰を受けるんですがあいつは嫌な顔一つせず罰走とかしてましたね」
「では、次の質問を。更利さんが何故、自衛隊を辞めたのか。その理由はご存知でしょうか?」
「それなんですがね。良く知らないんですよ。急に辞めちゃって」少し寂しそうな顔をする自衛官を見て、五人全員、この人は噓をついていない。そう思った。
「ありがとうございました。すいません。訓練中、邪魔してしまって」
長四郎は深々と頭を下げて礼を言うと、「いえ、とんでもございません。失礼します」自衛官はそう言って広報官に敬礼して訓練に戻っていった。
駐車場に向かう途中、長四郎は広報官に質問を始めた。
「都市伝説的な話ですが、別班って本当にあるんですか?」
長四郎がそう聞くと、広報官は高笑いした後に「居ないですよ。ドラマのアレですよね。確かに特殊部隊は存在しますが、あのような部隊は存在しません」
「そうですよね。バカな質問をして申し訳ございませんでした」
長四郎のその発言を受けて、ドヤ顔で別班による犯行だと言っていた事を思い出し残りの四人は笑いを堪えるのに必死だった。
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