対決-13
「フフフっ、甘いな」
勇仁は突き刺してきたナイフを華麗に交わし、華奢な手首を握っていた。
「離せっ!」
勇仁は言葉通りに離すと、ダンスパートナーはバランスを崩して地面に倒れた。
それと同時に、周囲の客が手に持つナイフやフォーク、スパナ等を武器にして一斉に襲い掛かってきた。
勇仁は目の前にいる男性客を蹴り飛ばし、次に横からスパナを振り落としてくる男を間一髪で交わし、鼻を目掛けてストレートパンチを繰り出しダウンさせる。
一方、長四郎もまた次々と襲い掛かってくる客達と格闘を繰り広げていた。
「ヘイっ! セイっ! ヘイっ!! セイっ!!」
変な掛け声を出しながら、襲い来る敵をあの手この手で地面に伏せていく。
だが、敵の数は多く倒してもキリがない状態が続き、二人の体力は限界を迎えつつあった。
「長さん。大丈夫か?」
息を切らしながら、長四郎に尋ねると「勇仁の方こそ、老いるショックでキツイんじゃないのか」と勇仁よりかは余裕のある台詞を吐く。
「やっぱり、年寄る波には勝てないか」
勇仁はそう言いながら、ナイフを突き立て向かって来る男に向かってダーツの矢を投げると、男の手首に矢が刺さり、その場に崩れ落ちる。
三度目のドラムロールが会場に鳴り響き、アナウンスが流れ始める。
「さぁ、会場の皆さん。ここで、助っ人の登場です!!」
「この期に及んで助っ人とは・・・・・・」
長四郎がそう言うと身体が地面から浮き始める。
「あららら」
長四郎が恐る恐る後ろに目を向けると、体格の良い身長190cm程の大男が長四郎の首根っこを掴み持ち上げていた。
因みに、長四郎の身長は175cmであり、勇仁は長四郎より1cm高い176cmである。
「長さん!」
勇仁は大男の手首目掛けてダーツの矢を投げ見事に命中するのだが、大男は無表情のまま長四郎を勇仁にぶつけるように投げ飛ばした。
勇仁は長四郎をキャッチすることなく、華麗に地面を転んで避け大男の太股にダーツの矢を投げた。
投げ飛ばされた長四郎は壁に激突し、一度は地面に伏すのだがすぐに起き上がると腕時計を取り外して、それをナックルのようにして拳を固め大男に殴りかかる。
大男は避けることはせずに、長四郎の拳を顔面に受ける。がしかし、ダメージを与える事なく長四郎は大男に今度は、殴り飛ばされる。
「とんでもないのが、出てきたな」
痛む身体に鞭打って立ち上がる長四郎。
その間にもゆっくりと勇仁に近づいていく。
勇仁はダーツの矢を投げつくし、この大男とどうやりあおうか頭の中でシミュレーションしていた。
大男が勇仁の目の前に立つその瞬間、長四郎は近くに落ちていたスパナを大男の後頭部目掛けて投げる。
ゴンッ!! という鈍い音共に大男の後頭部から血が流れ落ちる。
大男は平静の表情のまま後頭部に手を当て、その手に付いた血を見て目を見開く。
「キェェェェェ!!!!」という奇声を上げて、両腰に付いているガンホルスターから、サブマシンガンVz61(通称;スコーピオン)を取り外すと、手当たり次第に撃ち始めた。
「勇仁!」
「長さん!!」
二人はバーカウンター目掛け、一心不乱に走りカウンターを飛び越えて身を隠す。
「打ちどころが悪かったかな?」
「いや、あれはどこに当たってもこういう状況だったと思うよ」
勇仁が長四郎を慰めると同時に、バーカウンターの棚に置かれている酒瓶が撃ち抜かれていく。
「勇仁、どう逃げようか?」
「どう逃げようかねぇ~」
こんな会話をしている間も酒瓶は撃ち抜かれていき、二人の服は濡れていく。
「あ~ こんな事だったら、ラモちゃんのところに行けば良かった」
「燐のところに?」
「ほら、行方不明のお兄さんの部屋が荒らされてたんだと」
「ああ、そう言う事って。そんな事は後々」
「そうだな。どうやって、この場から去るかだ。って、あれ? 銃撃が止んだ?」
「そう言えば」
二人はゆっくりと息を合わせたかのように、ゆっくりと顔を出すと大男は姿を消していた。
「助かった?」
「そうみたいだね」
勇仁はそう言いながら、ふぅ~と息を吐くのだった。
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