映画-17
翌朝、長四郎がベッドで熟睡していると身体に強い衝撃が走る。
「グホッ!!!」
ベッドから転げ落ち、自分に何が起こったのか状況確認する。
あたりを見回すと、人間の足首が目の前にあった。
恐る恐る顔を上げると、イチゴ柄のパンティーが見えた。
「WAO!! イチゴ100%」
長四郎は思った言葉をそのまま口に出す。
「この変態っ!!!」
その瞬間、長四郎の視界はブラックアウトした。
「はっ!!!」
ベッドからがばっと起き上がる長四郎。
少し、頭が痛む。
昨晩、吞みすぎたせいで変な夢でも見たのかと思いながら横向くと鬼の形相でこちらを見ている燐の姿があった。
「どぁあっ!!!」
変な声を出しながら再び、ベッドから転げ落ちる。
「あ、朝から驚かすなよ!!」
「それは、こっちのセリフだし。私のパンツを見たくせに。変態っ!!!」
あれは夢ではなかなったのかと長四郎は、そこで初めてあの出来事が現実であったと認識した。
「あれは、不可抗力だろ。それに、ミニ履いているのが悪いんでしょうが!!」
確かに、燐の恰好は膝上15cm程のミニスカートを履いていた。
「そ、そんなの私の勝手でしょ!」
「で、俺に何の用?」
「はあ? あんたが昨日、来いって言ったんでしょ」
「そうだったけ?」
「そうだよ」
燐は呆れて物も言えないといった感じで手で顔を覆う。
「じゃあ、行くか」
長四郎は起き上がり部屋を出て行こうとするが、燐が真正面に立ち邪魔をする。
「な、何よ」
「そのままで行く気?」
「へ?」
長四郎は燐にそう言われて自分の恰好を確認する。
Tシャツは着ているが下はパンツ一丁であった。
「ひゃん!!!」
可愛らしい声を出して、長四郎は慌ててパンツを隠そうとする。
長四郎と燐は行動を開始した。
昨日、一川警部に頼んでいた事の結果報告を聞くため警視庁に設置された捜査本部へと顔を出していた。
「おっ、長さん!! 待っとたばい」
二人が部屋に入ってきたと同時に、駆け寄って来る一川警部。
「どうでした?」長四郎は早速、成果を聞く。
「ここじゃあ、なんやけん。場所変えよ。お昼は食べたと?」
一川警部は自身の腕時計を見ながら、質問する。
「まだですね」そう答えたと同時に、長四郎の腹が鳴る。
「こりゃ、がっつり系やね」
「え~太る飯ぃ~」
「何が、太る飯ぃ~だよ。見せる相手も居ないんだから、関係ないじゃん」
「んだと!」
「ラモちゃん、ギブっ!! ギブっ!!!」
締め上げられる長四郎は燐の腕をタップし続けるのであった。
一川警部の行きつけの博多豚骨ラーメンの店に来た長四郎と燐。
「え~並ぶのぉ~」
駄々をこねる燐を無視して、長四郎と一川警部は捜査の話をする。
「で、結果なんやけど」
「はい」
「レインコートから里奈ちゃんの髪の毛は付着しとったばい。勿論、裏側にね。
凶器は、恵一の指紋しか出んかったわ」
「然様ですか」
「そんで、アリバイの方は事務所が教えてくれんかったのよ。「里奈まで疑うんですか!!」って、偉い剣幕で怒られたらしい。聞いてきた捜査員の話しやけど」
「ねぇ、マンションの防犯カメラは確認したの?」
「勿論、確認したばい。ラモちゃん」
「それで、結果は」と長四郎。
「当該時間に里奈ちゃんが出て行く若しくは帰って来ている所は、映っとらんかったと」
「では、稽古部屋の方は?」
「そっちは、防犯カメラ自体が無かったとよ。近所の防犯カメラを今、調べとる最中」
「バイクの方は?」
「お兄さんのバイクのタイヤ痕と最初の現場で採取したタイヤ痕は一致したけん」
「そうなると、最初の犯行はお兄さんの線が濃くなりますね」
「そうやけん。長さんの話を聞いた時はびっくりしたばい」
丁度その時、入店のアナウンスがされ運良く3人一緒に入店でき、カウンター席に並んで座る。
各々、食したいものを注文し出来上がるまでの間、再び事件について話し出す。
「長さんは何で単独犯の犯行やと思ったわけ?」
「それはラモちゃんが、稽古部屋で見つけたキーホルダーの話を聞いた時すかね」
「私!?」燐はまさか、自分が起点だと思わず大声を出してしまう。
周りの客や店員もびっくりし、長四郎達に目を向ける。
「バカッ!! 大声を上げんなよ。
すいません。何でもないんで」
愛想笑いを浮かべながら、周りの客、店員に謝罪する長四郎。
「ご、ごめん」
燐もまた長四郎に小声で謝罪する。
「で、ラモちゃんが見つけたキーホルダーって何?」一川警部は、その話を詳しく聞こうとする。
「2ヶ月前、ラモちゃんが里奈ちゃんと共に購入したキーホルダーが稽古部屋の風呂場に落ちていたんです」
「そうなんです。だから、びっくりしたんです」
「はい、豚骨バリカタとライス大盛りのお客さん」
燐が言うと同時に、店員が注文した品をカウンター越しに渡してきた。
「あたしんとです」
一川警部はそういって受け取り、「お先に」と長四郎、燐に断わりを入れて食べ始める。
そうして、長四郎と燐にも商品が届き3人は黙々と食べ始める。
「ふぅ~」
いち早く食べ終わったのは燐であった。
「ごちそうさん」
「ごちそうさまでした」
長四郎、一川警部も燐に続き食べ終わる。
「じゃ、行こうか」
「うす」
「はい」
一川警部の奢りで昼飯を済ました2人。
店を出てすぐ一川警部は長四郎にこれからの予定を尋ねる。
「さて、これから何をすれば宜しいとですか?」
「そうすねぇ~」
手を顎に当て考える長四郎。
「やっぱり、里奈本人から話を聞くしかないでしょう」
燐が提案すると「却下」の二文字が返ってきた。
「えっ、何でよ」
「あんたが犯人ですか? はい、私が犯人ですって答えるアホがどこにいる」
「じゃあ、長さんの考えを聞かしてよ」と一川警部が言う。
「マネージャーの舞香さんをこちら側に引きずり込むしかないな」
「でも、事務所の人間だからそれは無理じゃない?」
「いや、そうでもないと思う」
長四郎は舞香と話した時、里奈の身を誰よりも案じているのを感じ取りそれにかけてみることにしたのだった。
「つーことで、一川さん。俺達は、マネージャーを引き込んでくるのでそちらの捜査は任せます」
長四郎はそう言いながら敬礼をする。
「分かったばい。ちゃんと、引き込んできてよぉ~」
「はい!!」
長四郎ではなく燐が真っ先に返事をする。
「善は急げね。行くわよ」
燐は自分について来いと言わんばかりに、颯爽と歩き出す。
「「善は急げ、私の好きな言葉です」ってか。あの急ぐのは結構なんですけど、道が逆なんですが」
「えっ、噓!?」
長四郎の言葉を受け、燐は立ち止まり振り返る。
『ホント』
長四郎と一川警部は声を合わせて事実であることを伝えるのだった。
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