大物-8
「いらっしゃいませ! ご主人様!!」
メイドさんにそう挨拶された長四郎は「どうも」と軽い会釈をし、席に通される。
「待たせたなぁ~」某声優バリの良い声で待たせていたフリーライターに挨拶する。
「いや、こちらも楽しませてもらっていたから、気にするな」
メイドから手渡されたナプキンで口に付いたケチャップを拭うフリーライター。
「で、分かったか?」
「ああ、手に入れるのには苦労したがな。今、データで送る」
フリーライターは横付けしているメイドからタブレット端末を渡され、長四郎のスマホにデータを転送する。
「お! 届いた。届いた」
長四郎は早速、届いたデータを開いて確認する。
「ほぉ~ よくこんな物が撮れたな」
「世界的なマップでもモザイク処理が施されているからな」
長四郎が見る写真は森下邸を映した衛星写真であった。
「次の写真を見てみろ」
衛星写真をスライドさせ、次の写真を映し出す。
「おいおい。今度は邸内の写真かよ。すごいなぁ~」
「おい、あまり大きな声を出すな」
「悪りぃ、悪りぃ。で、どこに監禁されていると思うか?」
「それなんだが、衛星写真に戻してくれ」
長四郎は指示通りに衛星写真へと戻す。
「良いか。そこに映っている母屋があるだろう」
「ああ」
「その奥側に離れの小屋と石畳の倉庫があるだろ?」
「あるな。このどちらかか?」
「そこでだ。邸内の写真を見てくれ」
邸内の写真を進めて行くと、瓜野が石畳の倉庫に和定食が載ったお盆を持って入って行く写真であった。
「成程。取り敢えず、生存が確認できて安心した。ありがとう」
長四郎は支払い伝票を持ち、立ち上がる。
「あ、それとドッグフードを忘れるなよ」
「ドッグフードね。了解」
会計を済まして、メイド喫茶を出た長四郎はその足で近くのドラッグストアへと入って行くのだった。
翌朝、燐は熱海探偵事務所へと来ていた。
「私を呼び出すって事は、何か掴んだんでしょうね」
事務所に入るや否や燐は長四郎に言った。
「吉報だ」
「てことは、紅音々さんは生きていた」
「Yeah」
「で、平日の朝かつ制服で来るように呼び出してきたって事への説明は?」
「それは、おいおいだ」
「おいおいって」
「そんでだ。これから、紅音々さん救出作戦の説明をするからよぉ~く聞いておけよ」
「分かった」
いつもより、真剣な長四郎を見て燐もまた真剣な面持ちで作戦内容聞き耳を立てる。
「良いか。今回の作戦では、ラモちゃんが迅速かつ動いてくれないと困る。「で、私は何をすれば良いのか?」と言えばなんだが、ラモちゃんには下校中の高校生を演じて欲しい」
「下校中の高校生?」
「そうだ。そして、救出した音々さんを発見、警察に保護を要請するまでがラモちゃんの役目だ」
「でもさ、追っ手がいるでしょ?」
「それなんだが、邸内に居る人間は森下衆男と他二名。だから、それは安心してくれ。それに」
「それに?」
「それ以上は言わない。今日はとにかく時間になるまで学校に行け。下校時刻になったら俺に連絡しろ。そこで、この話の続きをするから」
「分かった。必ず連絡する」
「頼むぞ。あ、後、これね」
長四郎はそう言って、ドッグフードの袋を机の上に置いた。
「ドッグフード?」
「これが救出作戦において重要なモノとなる。一応、持っといて」
「分かった」
燐は首を傾げながら、ドッグフードの袋を鞄にしまう。
「じゃあ、後は頼んだぞ」
長四郎は椅子から立ち上がり、事務所を出て行こうとする。
「ちょっと、どこ行くの?」
「まだ、準備する事があるから。鍵、宜しくな!!」
事務所の戸締りを燐に任せた長四郎は足早に出て行った。
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