第玖話-オニ
オニ-0
「はぁ、はぁっ」
一人のサラリーマンが、廃工場内を駆け巡る。
初秋の涼しい夜に汗だくになりながら、サラリーマンは走る。
「クソっ!! 俺が何をしたって言うんだよ!!!」後ろから迫るフードコートで顔を隠した人間に怒鳴り散らす。
「・・・・・・・・・」
サラリーマンに一切返答せず、フードコートの人間はサバイバルナイフ片手に追い回す。
必死で逃げ惑うサラリーマンだったが、足がもつれ転んでしまう。
「ヤべっ!!」再び身体を起こし、逃げる。
だが、転んだ際に膝を擦りむいたらしく、足に違和感を覚えながら走り続ける。
息を切らしながらサラリーマンは何故、自分がこんな事に巻き込まれたのか。必死で頭の中で考えを張り巡らせていた。
自分は至って、普通のサラリーマンだ。
毎朝、満員電車に揺られて出勤して上司にペコペコと頭を下げ満員電車に揺られ帰宅する平々凡々の毎日だ。
そんな自分が帰宅途中、いきなり襲われ気づいたらこの廃工場に居た。
そして、目の前にはサバイバルナイフを持ったフードコートの人間が立っていた。
「な、なんだ! お前!!」
「・・・・・・・・・・・・・・」
「何とか言えよ!!」そう言うとフードコートの人間は口を開いた。
「ゲームスタート」その一言と共に持っていたナイフをサラリーマンの胸元目掛けて、振り下ろす。
「うわぁ!!!」
咄嗟に避けて逃げ出し、今に至る。
「ひぃっ! ひぃっ!」
必死に逃げ惑うが足に痛みを抱えながら逃げ惑う。
「そろそろゲームセットかな」
フードコートの人間の声が木霊する。
「何っ!!」思わず立ち止まり辺りを見回してフードコートの人間を探す。
その場にフードコートの人間の笑い声が響き渡る。
「どこだっ!! どこにいるっ!!!」
必死で探すが姿は見えない。
「どこにいるでしょーか?」
「ふざけるな! 俺が何をしたって言うんだ!!!」
その言葉が虚しく木霊し、背後に気配を感じ振り向くとフードコートの男がすぐ後ろに立っていた。
「これでお終い」
その一言と共に身体に痛みを感じ、目を降ろすと血が染み渡ってきた。
「ゲームセット」
フードコートの人間はニヤリと笑い身体に刺さったナイフを抜き、その場から立ち去った。
サラリーマンはその場に倒れ込み薄れゆく意識の中、自分の血で地面に文字を書き記す。
「どうり」の三文字を。
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