対決-8

 長四郎と勇仁は命捜班の刑事二人と合流し、エグザグラムの足取りを追っていた。

 捜査会議で公安から提供された捜査資料を片手に四人は、公安がマークしていたエグザグラムと取引があるとされている企業・金星創業へと来ていた。

「社長は只今、外出しております」

 受付の社員がそう四人に告げる。

「そうですか。いつお戻りなるとか分かりますか?」

 絢巡査長がそう聞くと、「分かりかねます」とだけ答える社員。

「OK. 分かりました。戻ってこられるまで、ここで待たせてもらいます」

 長四郎はそう言って、応接用のソファーに腰掛ける。

「ちょっ、困ります!」受付の社員が長四郎に向かってそう怒鳴りつけると「じゃ、社長の居場所だけでも教えて頂けます?」と勇仁が問いかける。

「分かりました。少々、お待ちください」

 社員は内線を掛け、社長の居場所を問い合わせる。

「はい、ありがとうございます。社長は、海外に出張中です」

「海外? どこですか?」

「さぁ、そこまでは」

 絢巡査長の問いかけに、社員は首を傾げながら答える。

「仕方ない。出直すか」

「そうしましょうか」

 勇仁の提案に賛同する一川警部。

 長四郎もやれやれと言った感じで、ソファーから立ち上がり金星創業を出ていく。

「嘘っ、なんで。ここに居るの?」

 電柱に身を隠しながら、金星創業から出ていく長四郎達を見つめる燐。

「知り合い?」芽衣にそう聞かれ「うん、まぁ」とだけ答える。

 燐は心の中で、ラッキーと思うのだった。

「よしっ、行こうか」

 四人が居なくなったタイミングで、金星創業に乗り込んでいく。

「あのぉ〜」

 燐は控えめな感じで、先程まで長四郎達の相手をしていた受付の社員に話しかける。

「はい。どうされました」

「あの、財前慶次さんはいらっしゃいますでしょうか?」

「あの、財前にどのようなご用件で?」

 制服姿の女子高生が会社を訪ねてきたので、内心、財前という社員がパパ活で揉めたのかと思いながら用件聞く。

「彼女のお兄さんに忘れ物を届けに来ただけなんです」

 燐はそう答えながら、後ろに立っている芽衣を見る。

「はぁ、少々お待ちください」

 内線を掛けて、指示を受ける社員は「忘れ物はこちらで預かりますので」と言うので「ほらっ、渡して」燐は芽衣に持って来たものを渡すよう促す。

「お願いします」

 芽衣はそう言いながら、持ってきたポッキーの箱を渡す。

「確かに。渡しておきますね」

 社員は、変な忘れ物だと思いながら受け取る。

「では、失礼します」

 燐と芽衣は一礼し、金星創業を出ていく。

「ほんとに大丈夫かな?」

「大丈夫。大丈夫。名探偵の羅猛燐に任せなさい」

 心配する芽衣を励ます燐は、長四郎達とどうやって合流しようか頭の中で思案していた。

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