対決-7

 燐は悶々としながら、帰る支度をしていた。

 テスト期間中は午前中で終わり早く下校できるのだが、今すぐ長四郎と勇仁の元へと向かいたがったが、それが叶わず悶々としている。

「羅猛さん。今日もよろしくね」

 クラスメイトの金髪ギャルが声をかけてきたので、「ちょっと、待ってて」と返事をする。

「ったく、塾にでも行けっての」

 燐はそう言いながら、カバンを手に取り教室を出ようとするとクラスメイトの女子とぶつかる。

「あ、ごめん」

「こちらこそ、ごめんなさい」そう謝罪したのは、クラスメイトの一人である財前ざいぜん 芽衣めいであった。

「羅猛さん。もし、良かったらなんだけど、お話できる」

「ごめん。今日はあの子達と勉強会なんだ」

 燐は申し訳なさそうにしながら、楽しく談笑する金髪ギャルに目を向ける。

「そう。なら、仕方ないね」

 残念がる芽衣を見て、ただならぬ雰囲気を感じ取った燐は金髪ギャル達に向かって叫んだ。

「お〜い! 勉強会に一人追加!!」

「OK!!!!」

 金髪ギャル達は快く快諾した。

 各して、勉強会に利用しているカラオケボックスへと移動し勉強会が始まった。

「え〜っと、明日は一番の宿敵でもある」燐が言いかけた時、「数学ぅ〜」ギャル達が真っ先に答える。

「そう。数学。じゃ、始めるぞぉ〜 ワークの39ページ開いて」

「は〜い」

 ギャル達は指定されたページを開くと、一緒に芽衣も同じくページを開いて燐から教わり始める。

 二時間後、ギャル達はカラオケを楽しんでいた。

「いつも、こうなの?」あんりがそう聞くと燐は黙って頷く。

「彼女達は、赤点さえ取らなければ良いらしいから」

「へぇ〜」

「それで、私に何か相談があるんでしょ?」

「え?」

「だって、お話したいことがって言っていたじゃん」

「うん」

「私に出来ることだったら、力になるよ」

 燐にそう言われた芽衣は「実は・・・・・・」と喋り始めた。

 事が起きたのは二日前、芽衣の兄・慶次けいじが会社に行ったきり帰ってこないというのだ。

 芽衣は早くに両親に絶たれて、兄と二人暮らしであった。

「出張じゃないの?」

「それはない。言いたかないけど、私のお兄ちゃん、シスコンだから」

 芽衣はそう言いながら、スマホの無料メッセージを見せる。

 そこには兄妹の通話履歴が残っていたが、長文メッセージを送っているのは慶次でそれに一言だけ返す芽衣の会話でそのシスコンぶりが伺えた。

「確かにこれだけマメに連絡してくる人が居なくなるのは、不思議だね」

「でしょ。私がメッセージを送っても返事がないの」

 芽衣はこの二日間に送ったメッセージを燐に見せる。

 既読のマークすらついていない状態であった。

「警察には?」

 芽衣は首を横に振ってまだ相談していないという事を伝える。

「でも、警察に言えば探してもらえるかもよ」

「そうかもだけど。まだ、二日だし。相手にしてくれるかなと思って」

「確かに。会社から連絡とかないの? 行方不明だったら、無断欠勤で会社から何かしらの連絡が来るでしょ」

「それが、ないの。私、会社に電話したら通常通り出勤してますって」

「出勤してる? なんか、おかしくない」

「そうでしょ」 

 そう言う芽衣の顔は不安で仕方ないといった顔をしていた。

 シスコンだとかなんとか言って結局、自分もブラコンなんだなと思う燐。

「じゃあ、お兄さんの会社に行こうか」

「え! 今から」

「そう。今から、善は急げってね」

燐は出していた教材をカバンにしまい立ち上がる。

「ほらっ、行くよ!」

 燐は芽衣の手を引き、部屋を出て慶次の勤務先へと向かうのだった。

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