復讐-6
那覇空港に絢巡査長を乗せた飛行機が着陸した。
預けたキャリーケースを手荷物受取所で受け取り、到着ロビーに出ると知っている人物が「ようこそ、沖縄へ」と書かれたミニホワイトボードを持って絢巡査長を待っていた。
「長さんにラモちゃんどうして居るの?」絢巡査長は肥後への挨拶を忘れ長四郎達に説明を求める。
「今、この刑事さんと事件の捜査をしているんです」燐は真っ先に答えた。
そのすぐ後に肥後は「あ、どうも申し遅れました。沖縄県警の肥後です」と自己紹介する。
「こちらこそすいません。私、警視庁捜査一課命捜班の絢です。少しの間ですが、宜しくお願いします」
絢巡査長は肥後に一礼して挨拶する。
「じゃ、捜査本部に」そう言って肥後は駐車場に絢巡査長を案内する。
「ねぇ、どういういきさつで事件の捜査する事になったの?」
絢巡査長は隣を歩く燐に質問する。
「実はかくかくしかじかで」燐はここまでのいきさつを説明した。
「そういう事が。にしても、長さんも居るってのが凄いね」
「ま、沖縄に居なくても呼びつけていたんですけどね」
燐のその言葉を聞いて、長四郎と肥後は恐ろしい女子高生だ。そう心の中で思った。
「取り敢えずお荷物、車までお持ちします」
肥後は絢巡査長のキャリーケースを半ば奪うような形で取り上げ、駐車場へと案内する。
そして、肥後が運転する車が捜査本部のあるホテルに着いた。
捜査本部に入るとでかい横断幕が掲げられてありそこに「ようこそ。沖縄へ!! 絢巡査長」と記載されていた。
部屋は捜査本部から宴会場へと模様替えされていた。
「あ、あの・・・・・・」戸惑う絢巡査長に「さ、どうぞ。どうぞ」と肥後は絢巡査長に用意されたであろう特別席に案内する。
「ねぇ、帰って来る前はこんな感じじゃ無かったよね?」
「そうだな。取り敢えず、食べようぜ。ラモちゃん」
「うん」
長四郎と燐は席につき、テーブルの上に載ったゴーヤチャンプルーといった沖縄の郷土料理を食べ始める。
絢巡査長は沖縄県警の警察官たちに囲まれ、警察官同士でしか分かり合えない話につき合わされているようだった。
「犯人像とか心当たりあるの?」席に着くと同時に長四郎に質問する燐。
「無い」
「即答かよ」
「だって、現場に怪しい人物は居なかったわけだろう。無理だよ」
そう言いながらグラスにビールを注ぐ長四郎。
「まぁ、私が見た限りだと変な動きをした人は居なかった」
「だろ。ま、今日は料理を楽しもうぜ」
長四郎は早速、大皿に載ったゴーヤチャンプルーを自分の皿に載せると燐も自分の皿に載せろと自分の皿を長四郎に差し出す。
仕方なく長四郎は燐の皿にゴーヤチャンプルーを山盛りに載せた。
「ていうかさ、私達、こんな事していて良いのかな?」燐はゴーヤチャンプルーを口に入れる。
「そう言いながら、ゴーヤチャンプルーを食っているラモちゃんはどうなのよ」
長四郎はビールを流し込む。
「わ、私は部外者だから。良いのよ!」長四郎の右肩を叩く燐。
「痛っ!! 相変わらず、力強いんだから」
その一言にカチンときた燐は持っていた箸をラフテーに突き刺し「何か言った?」と笑顔で長四郎に質問する。
「何でもありません・・・・・・」今にも泣きそうな顔で下を向く長四郎。
そんな2人を見ながら肥後が絢巡査長に尋ねる。
「あの2人はいつもあんな感じなんですか?」
「ええ。ご覧の通り、とっても仲良しなんです」
絢巡査長のその言葉に肥後を含めた警官達は、どう見てもジャイアンとのび太の関係にしか見えない皆思った。
宴会は23時まで行われ、お開きになった。
翌日、長四郎が目を覚ます。
少し頭が痛むものの酷い二日酔いではなかったようで内心安心し、時間を確認しようと部屋の時計を探そうと視線を右横に移すと燐が眠っていた。
「うわぁ!!」大きな声を上げてベッドから転げ落ちた長四郎は自分がズボンを履いているか、すぐさま確認した。
きちんと履いていたので「ほっ」と安堵の声を出すとベッドから「う~ん」という声と共に燐が起き上がるのが見えたので長四郎は機敏に床で寝たふりをする。
のそのそとベッドから立ち上がる燐の音を聞きながら、こちらに気づくな。気づくな長四郎は心の中でそう何度も呟く。
「何してんの?」
長四郎の祈りは通じずあっさりと見つかった」
「おはようございますぅ~」長四郎は福島訛りで挨拶する。
「ずっと、そこで寝てたの?」
「あ、当たり前だろ」
「ふ~ん」燐の目はしらばっくれるんだというような目であった。
「何、文句あんのかよ」
「いいや」
燐はそれだけ言って、ユニットバスに入っていった。
「ふぅー」何とか切り抜けた長四郎はそう思いながら起き上がり、部屋のカーテンを開ける。
窓の向こうは澄んだ綺麗な蒼い海が見えた。
長四郎は何故、燐が隣で寝ていたのか考えるのは辞めようと窓からの景色を見てそう心に近い「さ、今日も一日、がんばるぞい!!」という言葉と共に長四郎はぶりっ子ポーズを取り、自分を鼓舞する。
後ろから「キモっ!」という燐の辛辣な言葉からその日は幕を開けた。
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