対決-19
長四郎と勇仁はインターコンチネンタルホテルを出てから、三度、小岩が爆殺された山下ふ頭を訪れた。
「なぁ、あいつの目的ってなんだろうな」
海を眺めながら勇仁が長四郎に質問した。
「さぁな。テロリストの考える事は、分からん」
「確かにな」
「勇仁はあの男がエグザグラムの新しいトップだと思うか?」
今度は長四郎が勇仁に質問する。
「だろうな。六本木のナイトクラブでVIP達を煽って俺たちを消そうとした」
「そして、失敗した場合に備えて殺し屋を配置させた。だとしたら、相当、切れる奴だぞ」
「切れるっていうより、プッチンしやすいタイプに見えたけど」
「俺も同じ事を思った」
「やっぱり、俺たち気が合うな」
「ああ」
二人はそこから黙りこくって、ふ頭から海をぼぉーっと眺める。
「なぁ」
長四郎と勇仁、同時に話始めたので「勇仁からどうぞ」と長四郎が譲る。
「じゃ、お先に」と前置き「燐の方は、大丈夫かなぁ~ と思ってな」と燐の身を案ずる発言をする。
「ラモちゃんか・・・・・・ 勇仁、どうやら俺達はラモちゃんの心配をしている暇はないぜ」
長四郎が向ける視線の先には、こちらに向かって走ってくる二台のジープがあった。
「今回は身体を張る事が多いな」
勇仁はストレッチして身体をほぐす。
「まーた、ドンパチか」
長四郎も軽くトントンとジャンプして身体をほぐすと同時に、ジープの助手席側の窓が開き中からサブマシンガンを持った男が出てきた。
当然、銃口は長四郎と勇仁に向けられる。
「さ、逃げるぞぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!」
勇仁の掛け声と共に走り出す長四郎。
そして、発射されるサブマシンガンの弾丸。
何故か、弾は二人の足元に着弾し、二人は被弾する事なく逃げ続ける。
「ハっハァ、年寄る波には勝てんのか。ハァハァ」
「喋れる余裕があるなら、大丈夫だ。ハァハァ」
息を切らしながら、長四郎は勇仁を励ます。
「そ、そう。ありがとう。あっああ」
足がもつれた勇仁が転倒する。
「勇仁!!」
少しでも立ち止まったら弾に被弾するが、長四郎は勇仁を覆い被さるようにして勇仁を庇う。
だが、二人に銃弾が当たる事はなかった。
逆に車がスリップする音がした。
「長さん! 長さん!!」覆い被さる長四郎をはねのけようとする勇仁に対して、長四郎はどこうとせず「動くな!」と勇仁を庇い続ける。
「長さん! 長さん!!」
僅かな隙間から見える光景はスリップしたジープが倉庫の壁にぶつかっているものであった。
長四郎も弾が当たらない事に気になり、ゆっくりと周囲を確認すると一川警部と絢巡査長そして、守が拳銃を構えて立っていた。
「悪い、悪い」そう言いながら、長四郎は勇仁から身を離す。
「あら、首が曲がっているじゃない」
長四郎は首を曲げている勇仁の首を元に戻す。
「長さん。無茶するんじゃないよ」
「それは、先輩もですよ」
守にそう言われた勇仁は「言うようになったじゃない」とほくそ笑む。
「敵さんはまだ、やる気みたいばい」
車からゆっくりと降りてくるヤン・イェン。
刑事三人は殺し屋とやり合うことになるので、拳銃を握る手に力が入る。
だが、ヤン・イェンは黙ったままサブマシンガンをゆっくりと刑事三人に向ける。
「来るばい」
「はい」そう返事する絢巡査長の手は固く握られる。
ヤンの手がサブマシンガンのトリガーを引くその瞬間、勇仁が投げたダーツの矢がサブマシンガンの銃口に入り暴発する。
「ぎゃぁぁぁぁぁ」
ヤンは手から血を垂れ流し、悶絶する。
「流石ぁ、先輩!」
「守! 感心してる暇ないぞ!!」
勇仁が言った瞬間、殺し屋の仲間がサブマシンガンを撃ってきた。
刑事三人は発砲しながら、長四郎と勇仁を連れてその場から退散するのだった。
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