御祭-6

 鑑識捜査員が撤収作業に入ると同時に、佐藤田警部補は現場に入った。

「にしても、真っ黒だねぇ~」

 佐藤田警部補は燃えた机を見ながらそう呟いた。

「なんか、花火の匂いしない?」

 長四郎は燐にそう聞くと「確かにする」と答えた。

「班長。現場見て、何か分かるんですか?」佐藤田警部補という人物をよく知らない遊原巡査が質問すると佐藤田警部補は「うん? 分かるかもだし、分からないかも。なんつって」と言い放ち、不敵な笑みを浮かべる。

「あの、私に協力出来ることありませんか?」

「協力? 協力ねぇ~」

 明野巡査の申し出に頭をボリボリと掻きながら、佐藤田警部補は考える素振りを見せる。

「佐藤田さん。彼女、借りれます?」

「じゃあ、探偵さんに協力してあげて」

「え? でも・・・・・・」

 自分から協力を申し出といて、探偵の相手をする事に戸惑う明野巡査に佐藤田警部補はこう言った。

「ああ、安心して。この探偵さんね、自ら事件に首を突っこんでは解決する人だから」

「佐藤田さん。ここだけは大切なので訂正しておきますけど、俺は自分から事件に首を突っこんでいるわけではないので。無理矢理、この事件製造機の女子高生に付き合わされているだけですから。これ、マジなんで」

「ああ、そ。ま、そうらしいからこのメイド女子高生さんの面倒も見てあげてね。行くぞ、遊原ぁ~」

 佐藤田警部補は明野巡査にそう言いつけると、遊原巡査を連れて警視庁へと戻っていった。

「帰っちゃいましたね」

「そうですね」と燐も明野巡査と一緒になって佐藤田警部補の行動にポカンとする。

 だが、我らの熱海長四郎はそうではなかった。

 長四郎は事件現場から離れて、先程、佐藤田警部補と共に座っていた座席に戻る。

「う~ん」と唸りながら長四郎は、こめかみをぐりぐりとこねくり回しながら考えこむ。

 そんな長四郎を見つけた燐は鬼の形相で、駆けって近づいていきドロップキックを浴びせる。

「何するんだ!! 暴力女子高生!!」長四郎が涙を浮かべ抗議すると、「何、サボってるんだよ!!!」と燐は反論する。

「まぁまぁ、落ち着いて」明野巡査が宥めるも燐は耳を貸さなかった。

「泉ちゃんは、黙ってて」

「ラモちゃん。年上の人にそういう物言いはないんじゃない?」

「あんたがサボっているからでしょうが!」

「サボってません。考え事してたんですぅ~」

 小学生のようなやり取りだなと思う明野巡査は、こんなやり取りを見る為にここに残った訳じゃないと苛立ちを覚える。

「泉ちゃんからも何か言ってください」

「え、じゃあ、探偵さんは何を考えていたんですか?」

「流石は警察官。良い質問するねぇ~」感心する長四郎に対して、明野巡査は馬鹿にされているように感じムッとした。

「教えてあげるよ。犯人の人物像を考えていたんだ」

「プロファイリングですか?」

「プロファイリングって程、高尚な物じゃないけど。自分が犯人だったら何が目的なのかなってさ」

「愉快犯じゃないの?」

「ラモちゃんは短絡的だねぇ~ 良いか? 愉快犯だったら、多く爆弾を仕掛けて起爆させたはずだろ? だが、爆発しない。これの意味は?」

「じゃあ、何? 誰かを殺そうと思っての犯行だっていうの?」

「それは、犯人に聞いてみないとねぇ~」

「ったく、期待させるような言い方しないでよ」

「探偵さん。ここの生徒が犯人だって言うんですか!?」

 急に起こり始めた明野巡査を見て驚く長四郎と燐。

「いや、現役の生徒とは限らんぜ。卒業生かもしれないし、他校の生徒かもだよ」

「でも、探偵さんは明らかに現役の生徒が怪しいっていうような言い方だったじゃないですか!!」

「何? 泉ちゃんはこの学校の生徒を信じたいとでもいう訳?」

「はい」と明野巡査は自信満々に答える。

「泉ちゃんにこれだけ言っておくよ。もし、この学校の生徒が犯人だったとしても邪魔だけはしないでくれよな」

 長四郎は明野巡査にそう言い放ち、校舎へと場所を写した。

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