彼氏-18
翌日、長四郎は燐と共に日向の元を訪れる為、事務所で集合になっていた。
長四郎は燐に叩き起こされないよう、キッチリと集合1時間前に起き準備して待っていた。
「ふわぁ~あ」
盛大なあくびをし、燐を待つ長四郎。
それから30分後、燐は事務所に来た。
「30分。遅刻」
燐が部屋に入って来るや否や、長四郎は嫌味を言う。
「ごめん、ごめん。実はさ、予定外の事がおきてさ」
「リリちゃんが来るって、言い出したんだろ?」
「どうして、分かるの?」
「だって、後ろ」
「え?」
長四郎が指をさす方を見ると、自分の真後ろにリリが立っていた。
「うわっ!!!」
リリとは、日向が住むマンション前で落ち合うことになっていたからだ。
「何、驚いているの?」
「いや、別の場所で集合だったからよ」
長四郎の問いに、燐は事情を説明する。
「そう。それでリリちゃんはどうしてここに?」
「いや、何と言うか。気が気でなくて・・・・・・」
「その気持ちも分らんでもないけどな」
「じゃあ、行こう!!」
燐の号令と共に、日向のマンションへと向かう3人。
日向は大きなキャリーケースを引きながら、マンションを出る。
だが、事前に呼んでいたタクシーがマンションの前に止まってはおらず、スマホを取り出してタクシー配車アプリで履歴を確認する。
「タクシーは、帰しましたよ」
そう声を掛けられ、振り向くと長四郎、燐、リリの3人が満面の笑みを浮かべながら立っていた。
「ご旅行ですか?」燐がそう尋ねると「・・・・・・」無言で口をあんぐりと開ける日向。
そんな日向にツカツカと近づき、リリが思いきりビンタする。
『ウワァ~オ』長四郎と燐は声を上げる。
「何すんだよ!!」日向はそこで声を出し、リリを睨み付ける。
「まぁ、女の怒りは恐ろしいという事で。ご容赦ください。それで今日、我々が来た理由はですね」
「美歩のことですよね」
「お、察しがよくて助かります。円山美歩さんの事件で動きがありまして、そのご報告に」
「それを俺に話して、事件が解決するんですか?」
「どうして、そうお思いに?」燐は意地悪な感じで質問する。
「それは・・・・・・」
「ラモちゃん、意地悪しないの。まぁ、日向さんにお話をしたら事件が解決するというのはご名答です」
長四郎のその言葉に、日向は眉をひそめる。
「実は、円山さんを殺害したであろう犯人の衣服が見つかったんですよ」
「それで」意外と動じることなく日向は、話を続けるように促す。
「その衣服は、明らかに男性物の服でしてね」
「つまり、その服が俺の物ではないかと?」
「その通りです」と燐が答えた。
「でも、俺の物かどうかは分かっていないんですよね?」
「そうですよ。どうです? 無実を証明するためにもDNA鑑定しませんか?」
「すいませんが、これから旅行に行かないといけないもので。後日でも、構いませんか?」
「そんな日が掛かるものではないですよ。髪の毛一本、提供して頂ければそれで終わりなので」
「し、しかし・・・・・・」
スマホの時計を見て急いでいるアピールをして、日向はその場から逃げ出そうとする。
「ああ、そう言えば凶器に使われたナイフも見つかってないんですよねぇ~」
長四郎が嫌味ったらしい顔で、日向を見る。
「そ、そうですか。では、失礼します」
キャリーケースを引いて立ち去ろうとする日向の前に、リリが立ちはだかりチャック袋に入った血塗られたナイフを突きつけた。
「ひっ、ひぃ!!」
今までに聞いたことのないような声を上げて、日向は尻餅をつく。
「どうしましたか?」
「いや、何でもありません」
長四郎の問いかけに、日向は毅然と答えたつもりだったがその声は震えていた。
「もしよろしければ、歩きながらでも構わないので、このナイフを見て貴方が驚く理由を当てても宜しいですか?」
長四郎はそう言いながら、不敵な笑みを見せた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます