対決-24
手術室入口の手術中のライトが消え、手術室から執刀医が出てきた。
「先生」
燐は執刀医の元へ駆け寄り、手術の結果を聞こうとする。
「手術は成功です」
「ありがとうございます」
燐は涙声で執刀医に深々と頭を下げる。
「いえ、それが仕事ですから」
それだけ言うと、その場から立ち去っていった。
「ラモちゃん。辛いところ悪いんだけど、どうしてこうなったか教えてくれる?」
「はい」
燐から連絡を受けて病院に駆けつけた絢巡査長は、燐を連れて待合室へと移動し事情聴取を始める。
目を真っ赤に腫らした燐は晴海ふ頭で起きた全ての事を絢巡査長に話した。
「罠に嵌められたみたいだね」
「はい・・・・・・」
燐は項垂れながら、返事をした。
「全く、あたしらにもっと早く連絡してくれればねぇ~」
「はい、すいません・・・・・・」
「一川さん。嫌味を言わないであげてください」
「ごめ~んね」
「一川さん!」
絢巡査長が一川さんを窘めると「絢ちゃん。一川さんは悪くないぜ」長四郎が今頃になって、姿を現した。
「長さんまで・・・・・・」
「ラモちゃん。悪いが探偵ごっこは、ここまでだ」
「・・・・・・」燐は黙ったままでいつものように、反論しない。
「燐。長さんが何でこんな事を言うのか。分かるか?」
長四郎と共に駆けつけた勇仁が燐に問いかけると無言のまま首を横に振る。
「燐は依頼人のお友達を危険な目に合わせた。つまり、探偵として一番やってはいけない事をした」
燐はそこで顔を上げて勇仁を見つめこう言った。
「お爺様達がもっと早くに来てくれれば、こんな事にはならなかった!!」
「まぁ、確かに。俺達が気づくのが遅かったのは認めるよ。だけど、良いか? ラモちゃんは、あの子の兄ちゃんが接触してきて怪しいと思ったから俺達に連絡を寄越した。違うか?」
「それは、そうだけど・・・・・・でも、芽衣ちゃんはお兄さんの身を案じていた。だから、協力しようと思って晴海ふ頭へ行った」
「そして、易々と罠にハマった結果が、これだ」
「長さん!」絢巡査長に怒られ首を窄める長四郎。
「燐。探偵の鉄則は、どんな事があっても依頼人を危険に晒さない事なんだ」
勇仁が諭すように言うと、燐は苦々しい顔をして「ごめんなさい」と謝る。
「遅ぇよ」
長四郎は燐にそれだけ言うと、病院を出ていく。
「燐、良いか。お友達に付き添ってるんだぞ」
勇仁は気を落とす燐の肩を叩いて励ますような笑みを浮かべ、長四郎の後を追う。
「勇仁、ごめんな。孫に酷な扱いしちまった」
「気にするな。燐には良い薬になったはずだし。さて、問題はこれからだ。どうやって、奴らとやり合うかだなぁ~」
「そこのお二人さん。ちょっと、お話があるとですけど」
一川警部が二人を手招きして呼ぶ。
長四郎と勇仁は一川警部に招かれるまま駐車場に移動すると、そこに居たのは守、絢巡査長の二人であった。
「絢ちゃん。超能力者? いつの間に駐車場に移動したの?」
長四郎に質問され「私の祖先は忍者なので」と忍者の印のポーズを取る絢巡査長。
「へぇ~ そうなんだぁ~」と言いながら、長四郎は絢巡査長と同じポーズを取る。
「噓です」
普段言わない事を口走り少し、絢巡査長は顔を赤らめながら後悔する。
「それで、俺達を呼び出したって事は何か分かったって事か? 守」
「ええ、長さんが晴海ふ頭で拾ったUSBから」
守はそう言いながら、ノートパソコンを開きUSBに入っていたファイルを開く。
すると、動画が流れ始めた。
「ここで音を出すのは、あれなのでミュートで見てください」
五人は動画を真剣な面持ちで見る。
動画には、二か所の建造物が映し出された。
一つは、お台場のレインボーブリッジ。
もう一つは、横浜ランドマークタワー。
そして、二つの建造物に赤いマークが打たれた後に爆発のエフェクトがつく。
そこで動画は終了した。
「成程。前尾は爆弾テロをしようとしてる訳か」
「勇仁、そう吞気な事を言っている暇ないんじゃないの?」
「長さんの言う通りですよ。先輩。多分、奴らはこの二つの場所の爆弾を仕掛けていると思われます」
「思われますって。守! 吞気な事を言っている暇じゃないだろ!」
「分かってます。だから、一川さんとも話をして警視庁と神奈川県警で連携して事に当たろうとしているところです」
「でも、事がすんなりと行くとは限らんけん。お二人に協力して頂きたいと」
一川警部は頭を下げて、お願いをする。
「頭上げてくださいよ。いつもの事じゃないですか」
長四郎がそう言うと「ありがたかぁ~」と光り輝く頭をぴしゃりと叩く一川警部。
「じゃ、長さん。前尾を突っつきに行きますか?」
「OK.」
二人が前尾の元に行こうとすると守が「先輩。それは、明日にしてください」と言ってきた。
「どうしてだよ」
「良いから。明日の朝、ここに来てください。勿論、長さんも」
守にそう指示を受けた探偵二人は互いの顔を見て不思議そうな顔をするのだった。
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