返金-14
長四郎がピシャリを尾行している頃、燐は何をしていたかというと。
「暑い・・・・・・」
燐は汗を拭いながら、例の会社を監視していた。
「暑いね・・・・・・」
そう言いながら、奈緒も持参したタオルで汗を拭う。
「にしても、動きがないですね」
「本当に。で、相棒の探偵さんは?」
「さぁ? どこかで涼んでいるんじゃないんですか?」
「サボっているって事?」
「そうなりますね」
「ねぇ、あなた達って付き合っているの?」
「付き合ってませんよ。付き合っていたら、犯罪です」
「犯罪って事は、未成年?」
「はい。女子高生です。てか、前に言いませんでしたっけ?」
「ごめん。覚えてない」
「ええ~ あまり女子高生らしくないって言われますけど」
「そうなんだ」と冷たい返事をして、そのまま張り込みを続ける。
燐は少しイラッとする。
だが、ここまで動きがないので燐は再び会社に乗り込もうかとも思ったが、それも能がないので何か相手をおびき寄せる策を頭の中で考える。
「ねぇ、詐欺にあった老人ってお金持ちなの?」
「あ、はい。タワマンに住んでいるので」
「そう」
奈緒の質問の意図が読めず、燐は少し困惑する。
「奈緒さんは、詐欺グループを追っている事を上司に報告しているんですか?」
「してない。どうして?」
「組織に準ずる人は身動きが取りにくいって、ここに居ないアホ探偵が言っていましたから」
「へぇ~」
気のない返事をする奈緒。
「一つ聞いて良いですか?」
「何?」奈緒はここら辺から、質問の多い子だなと思い始める。
「この前は濁されましたけど。警察もあの会社を捜査しているんですよね?」
「ええ、捜査している。しかも、潜入捜査もしてる」
「それ、言っても大丈夫なんですか?」
「もう、貴方に隠し立てしても意味ないと思ったから」
奈緒から、ちょっとだけ信頼され始めたのかと思い燐は少し嬉しくなる。
「その潜入捜査官の刑事さんと、連絡が付かないから奈緒さんが独断で捜査しているんですか?」
「鋭いわね。そう、その潜入捜査官は私の彼氏」
「えっ!!」思わぬカミングアウトに燐は絶句してしまう。
「警察官あるあるよ。同僚と恋愛関係になるのは」
「そうなんですか」
燐はそこで、思い出した。一川警部の奥さんも元は警視庁の刑事だったことを。
「だから、私は命令を無視して捜査しているの」
「それは、早く解決しないとですね!」
燐は指をポキポキと鳴らしながら、気合いを入れ直す。
奈緒の彼氏を助けるために、燐は思いつきがてら例の会社が入っているビルに入って行く。
「え! 急にどうしたの!!」
奈緒は慌てて燐を追いかける。
「奈緒さんは、外で待機してください。出来れば、応援を」
「わ、分かった。気を付けてね!!」
燐は了解したの意味を込めて、サムズアップで返事をしながらビルに入って行く。
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