愛猫-11
「へぇ~変な男が」
警視庁本部の命捜班の部屋で長四郎は一川警部からスナックで得た証言内容を聞きそう答えた。
「そ、変な男。長さんの方は、収穫あったと?」
「一川さんの程、有益な情報ではないですが」と前置き「これです」廃工場で見つけた業務日誌を一川警部に渡す。
一川警部は直ぐに目を通し、こう述べた。
「長さんの考える犯人って、あん人でしょ?」
「あん人が俺の考える人であれば、ご名答です。一川さん」
「でも、動機はなんやろ?」
「分かりません。個人的には痴情の縺れ若しくは金銭関係ですかね」
「動機の王道やね」
「まぁ、本人の口から聞かないことには何とも言えないですから」
「それで、追い詰める算段はあると?」
「無いです」
「スナックのママに証言して貰うっていうのはどうやろ?」
「いや、確証もないのに目撃証言だけで追い込むのはきつくないですか? 偶々、店に入った言われればそれで終わりですから」
「う~ん」
男2人、腕を組み悩んでいると「お待たせしました」とニッポンポン株式会社の資料が入った大量の紙袋を抱えた絢巡査長が入ってきた。
「絢ちゃん、その資料はどげんしたと?」
「私の知り合いに、特捜部に勤める知り合いが居ましてね。ちょっと、借りてきたんです! よっ!!」
重そうな紙袋を机に叩き付けるように載せた。
「特捜部って、検察の?」
長四郎の質問に絢巡査長は「そうです」と答えながら、紙袋から資料を取り出し、机の上に広げていく。
「ニッポンポンって、そげん怪しい会社なの?」
「私も長さんから連絡貰うまでは気にしていなかったんですけど、少し探りを入れてほしいと言われまして知り合いに連絡したら、これが」
広げ終わった資料を指さしながら絢巡査長は答えた。
「にしても、凄い量だな」
驚く長四郎の手にはどこで手に入れたのか分からない裏帳簿のコピーが握られており、目の前にはそれに類する素行調査や口座の金の流れが記載された資料が机の上に山積みに載っかっていた。
「ええ、でも半年分らしいです」
「これで、半年!? はえ~」一川警部はスキンヘッドの頭をペチペチと叩きながら驚愕する。
「事件に繋がるようなものありますか?」
手当たり次第に軽く目を通しては机に戻す作業をする長四郎に問いかける絢巡査長。
「右京さんじゃないから、直ぐに事件に繋がるような物は見つけらんないよ」とだけ返事をし、長四郎は作業を繰り返す。
「絢ちゃん、あたしらも中身を確認しましょ」
「はい」
命捜班の2人も長四郎と同じ作業にかかる。
時は経ち、命捜班の部屋に朝日が差し込んできた。
一川警部と絢巡査長が床に寝転がり仮眠をとる中、長四郎は1人黙々と作業を続けていた。
「あーダメだ。全然分かんねぇ」
長四郎は資料を机の上に投げ置き、目元を抑えながら天を向く。
「んっ」目を覚ました一川警部。
「おはようございます」
「おはようさん」そう返しながら、凝り固まった身体を解す一川警部。
「大丈夫すか? 床に寝転がって寝るのは結構ですけど」
「あ、うん。大丈夫ばい。なんか、分かった?」
「ダメっす。事件に繋がるようなものがないすね。でも、気になることは何個かありました」
「そうかぁ~どうする?」
「どうしましょうか?」一川警部の質問に質問で返す長四郎。
「現場百回という事で、「CATエモン」に行きますか?」
起きたての山姥のような頭をした絢巡査長が進言する。
『はい、そうしましょう』
絢巡査長の進言を2人は聞き入れ、長四郎達は「CATエモン」に向かうことになった。
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