詐欺-7
「返信していますね」
返信していることを確認した地牛はすぐに報告した。
「おっ、マジか」相手にしているとは思わず、長四郎は驚いた反応を示す。
「これです」
地牛は返信した際の画面を見せる。
内容を拝見しました。
一応、事務所にも確認しましたがその様な事案は確認できませんでした。
詳しくお話をお聞きしたいので、こちらの方へ連絡頂けないでしょうか。
宜しくお願い致します。
その後には、無料通話アプリのアカウント情報のQRコードが添付されていた。
「この続き追えるか?」
「勿論」
地牛は無料通話アプリの履歴から、この情報提供者との通話記録を探す。
「ありました」
地牛のその言葉を受け、三人はモニターを食い入るように見る。
そこには「会って話したい」という情報提供者の一文と「了解しました」とへケべケの返信だけと音声通話記録しか残されていなかった。
「こいつと会っているみたいだな」長四郎は履歴を見ながら腕を組む。
「そうみたいだけど。今回の事件と関わっているって言うの?」
「分からない。けど、このKuunって事務所は、Kuunhubを経営する会社のグループ企業なんだ。という事はだ。この失踪事件が事務所にとって突かれたくない事案だとしたら、その事を調べ上げようとしていた被害者を殺す理由になるだろう?」
「事務所に所属しているんだったら圧力だったり、チャンネル削除で握りつぶせるでしょ」と燐が反論する。
「今の世の中、Kuunhub以外でも配信媒体はあるから。そんな事やっても火に油を注ぐだけ」
「新様の言う通り」長四郎の推理に地牛は賛同の意思を示した。
「じゃあ、この事件を追うの?」燐は不機嫌そうに尋ねた。
「そうだな。この情報提供者と話すことは可能か?」
「お任せください」
長四郎の依頼に応える為、地牛は無料通話アプリの通話ボタンを押した。
相手はすぐに応答した。
「はい、もしもし」
相手は恐る恐るといった感じで通話に出た。
「あ、もしもし。私、熱海探偵事務所の熱海長四郎と申します」
「はぁ」
「単刀直入に言います。貴方がへケべケさんに話したタレコミ情報について調査しています。一度会って、詳しくお話を聞かせて頂けないでしょうか?」
「ちょっと、待って下さい。どうして、へケべケさんのアカウントを通して連絡しているんですか? ネットで見たんですけどへケべケさん殺されたんですよね?」
「そうです。その事件に繋がっている可能性があります。その捜査の為に協力して頂けませんか?」
「分かりました。僕、
「浦安さんですね。今から会ってもらう事は可能でしょうか?」
「可能です」
そこから長四郎と浦安は、落ち合う場所の打ち合わせをした。
「では、16時にカフェカラフルで」
「はい」
「では、失礼します」
長四郎がそう言ったと同時に地牛が、終了ボタンを押した。
「という事になりましたので。君はここで終了」
長四郎は地牛の両肩をポンポンっと叩き、一人部屋を出ていこうとするので、燐は襟を掴み引き止める。
「どこ行くのよ?」
「どこって、カラフルに決まっているでしょう」
「一人で行くの?」
「二人で行きます」
燐の顔は笑顔なのだが、目は一切笑っていなかった。
「宜しい」
こうして、管理人のお爺さんに部屋の鍵をかけてもらい地牛と別れて長四郎と燐は浦安に喫茶カラフルへと場所を移した。
そして、約束の16時を迎えた。
「来ないね」
「まだ、16時になったばかりだろ」長四郎はそう答えてチョコレートパフェを食べる。
「そうだけど」燐は不服そうにしながら、窓からの景色を眺める。
5分後、一人の学ランの制服を着た男の子が駆けって店に入ってきた。
店内を見回し、客が長四郎達しか居なかったので長四郎達が座る席に男の子は座る。
「君が、浦安さん? 若いけど、中学生?」長四郎が尋ねると「はい、中学生です。名前は
「なんか、悪いね。学校に居るのに電話かけちゃって」
「いえ、今日は休日なので部活の練習中だったんです。だから、気にしないでください」
「あ、そう」素っ気ない感じで返事する長四郎は本題に入った。
「それで、先程話した件なんだけど」
「はい。姉の事ですよね」
「そう。お姉さんが居なくなった経緯は知っているから、先ずはへケべケに話したあたりの事から話してくれない?」
「僕も最初、相談した時は一蹴されると思っていましたが、話を聞いてくれるとのことで会いました」
「それは、いつのこと?」燐がここで質問した。
「えっと、二週間前だったかと」
「ふーん、それで」長四郎は肘をつきながら、続けるよう促す。
「それで、姉が行方不明になった時の詳細を伝えると興味深そうに聞いてくれました。
話を聞き終えたへケべケさんは、調査してくれると言っていました」
「それの結果については何か言っていたか?」
「はい。一昨日ですかね。詳細が掴めたのでその事を生配信で発表をして良いかという話を聞かされました」
「なんて答えたの?」
「承諾しました。それとへケべケさんは、こうも言っていました。
とある大物Kuunhuberが消えることになるだろうと」
「それ、誰の事?」
「分かりません」
燐の質問にきっぱりと答える浦安。
「分かった。じゃあ、次にお姉さんが行方不明になった日の事を聞かせて」
「姉が行方不明になったのは、3週間前の事でした。
姉はKuunに行くと言って出て行ったきり、帰ってきませんでした。両親も心配になり警察へと届け出て、姉の友人とかにも連絡したのですが行方が分からないままで」
「成程ね」長四郎は納得し、溶けたパフェのアイスを口に入れる。
「ねぇ、警察からはなんて言われたの?」
「家出じゃないかと言っていました」
「Kuunに行った経緯は何か知っているか?」
「確かぁ~詳しい内容は分かりませんが、DMで勧誘を受けたとか言ってました」
「了解した。後はこっちで調べとくから、何か好きな物頼みな」長四郎は浦安にメニューを渡す。
「ありがとうございます。頂きます」
食べ盛りの学生は、ナポリタン大盛、ハヤシライス大盛、アイスティーを注文した。
「俺、トイレ」
長四郎はトイレに行くふりをして、そのまま会計を燐に任せて退店した。
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