大物-22

 議員会館近くのコインパーキングにバイクを停車させ、議員会館へと向かう長四郎と燐。

「いきなり、貴方は狙われています。って言って信じてもらえるの?」

 燐の問いに長四郎は答える事なく、歩を進める。

「答えなさいよ!」

「嫌だ」長四郎はその一言だけ答えるだけで、何も喋らなくなった。

 こうなったら、てんで喋らない事は燐も理解できたので腹いせに長四郎の尻を蹴り上げる。

「キャイ~ン!!!」長四郎の絶叫が永田町にこだまするのだった。

 議員会館に着いた二人は受付で光希望に面会希望を出したのだが、本人不在との事でその行き先について調べてもらっていた。

「光議員は本日、横浜で記念パーティーに出席されているようです」

 受付の警備員に「ありがとうございます」と礼を言い、バイクを止めてあるコインパーキングへ駆け足で戻る長四郎と燐。

「ラモちゃん。バイクにETCは付いているか?」

 料金の精算をしながら、燐にETCの有無を確認する。

「付いてるよ。はい、これ」

 燐はETCカードを長四郎に渡す。

「悪いね。高速代出してもらっちゃって」と建前上の礼を言ってETCカードを機械にセットする。

「さ、行くぞぉ~」

 長四郎と燐はバイクに跨り、光希望が居る横浜へと向けて走り出した。

 一時間程して目的地へと到着した二人は、記念パーティーの会場に向かった。

 だが、会場に着くと記念パーティーは終了しており、会場に残っているのはパーティーのスタッフだけであった。

 長四郎は片付け中のスタッフに声を掛けた。

「お忙しいところ、すいません」

「はい。なんでしょうか?」

「国会議員の光希望先生は、もう帰られたのでしょうか?」

「あ、そうですね。帰られたと思いますよ。今だったらまだ駐車場に居るんじゃないんですかね?」

「本当ですか! ありがとうございました!!」

 長四郎はスタッフに礼を言って、大急ぎで地下駐車場へと移動した。

 エレベーターを降りて駐車場に出ると、一人の女性が無理矢理ワゴン車に乗せられようとしていた。

「ラモちゃん!」

「言われんでも分かっとる!!!」

 燐は女性を車に押し込めようとする男を蹴り飛ばす。

「バイオレンス!!」

「感心していないで、早く助けなさいよ」

「へい!! お頭!!!」

 長四郎は燐に言われるがまま女性を車から引っ張り出すと、ジャケットに議員バッジが付いていたのでこの人こそ目的の人物、光希望である事が分かった。

「取り敢えず、逃げましょう」

「で、でも・・・・・・」

 光議員は男達と格闘している燐の身を案じる。

「あの女子高生なら大丈夫ですから。さ、こちらへ」

 長四郎が駐車場から連れ出そうとすると、別のワゴン車が二人の前に姿を現す。

 そして、黒スーツの男達が降車し、長四郎と光議員の前に立ちはだかる。

「参ったな。後門の狼、前門の虎って感じだな」

「それ逆です」と思わず訂正してしまう光議員。

「ご丁寧にどうも。俺から離れないで」

「はい!!」そう答える光議員は、長四郎の服を強く握る。

 長四郎はちょっとラッキーと思っていると、後ろで男達と血眼になって闘っている燐が「早く連れて行けよ!!」と長四郎に発破をかける。

「ったく、ピンチのくせしてよく言うよ」

 ベルトに付けたホルスターから、折り畳み式のブーメランを取り出しパチンっと音を立てて組み上げ、燐が居る方向へ投げる。

 ブーメランは華麗に飛んでいき、燐を羽交い締めにする男達の髪の毛を綺麗に剃って戦意を喪失させた隙を狙って燐は反撃をする。

 そして、ブーメランは長四郎の手元に返らず、目の前に立つ男達をなぎ倒していく。

 返ってきたブーメランを畳みホルスターに戻した長四郎は、「逃げましょう」と光議員に告げ起き上がろうとする男の顔を思いっきり踏んづけてその場から立ち去る。

「自分だけ逃げるな!!」

 燐もまた男の顔を再度踏んづけて、長四郎の後を追いかけるのだった。

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