過去-6
「待ちなさい!!」
玲は大声を出して、すぐさま稲垣を追いかける。
だが、稲垣はすぐに一川巡査部長の大外刈りによって取り押さえられた。
「状況が読めんのやけど、何があったと?」そう尋ねて来たので「お手柄です。一川さん」と長四郎はそう言いながらサムズアップするのだった。
こうして、剛田恒造殺害容疑で稲垣啓は逮捕された。
連行される稲垣の服からバッジが落ちたので、長四郎は拾い上げてそのバッジを見ると鷹の目の中に骸骨が描かれている独特な紋章をしたバッジであった。
「変なバッジだな」長四郎はそう呟くと黙って玲にそれを渡して店を後にした。
これが一川警部と妻の玲の出会い、そして長四郎との出会いとなる事件であった。
「という事で、オニと長さんに出会ったわけ」一川警部は絢巡査長への説明を終えた。
「へぇ~そんな出会いなんですね。そう言えば、稲垣は剛田を殺した動機は何だったんですか?」
「絢ちゃん、よう聞いてくれたね。実はこの後変な事があったとよ。取り調べで稲垣が語った動機は剛田が稲垣の所属する組織の資金提供を打ち切ると言われたので、殺したという事らしいんやけどそこの自供をしたあたりで、公安に捜査を全部持って行かれたとよ」
「え? どうして、公安が出てくるんですか?」
「あたしも後々、調べたんやけど何にも手掛かりが得られなかったと」
「じゃあ、その組織って公安の案件だったっていうことですか。変な事件ですね」
「ま、そんな変な事件があたしら夫婦の出会いでもあるけん。世の中って不思議なんよ」
一川警部はそう言って窓からの景色を見ると、雪が降り始めていた。
完
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます