希望-13
「どこ行くんだよぉ~」
燐に引きずられる長四郎は、そう話しかける。
「SUITOを探すに決まっているでしょ」
「いや、あれは探さなくて良いよ」
「どういう意味?」
燐は掴んでいた手を離して、長四郎は床にこける。
「痛たたたたたたた」
打ち付けた尻を擦りながら起き上がると、燐が詰め寄って来た。
「探さなくて良いって、どういう意味?」
「言葉の通り。あそこで示された隠し場所は本当だと思うよ」
「でも、人手が足らないでしょ」
「足りるよ。大会議室に居た捜査員の数は優に100人超えてんだから」
「うぐっ」反論の余地がないと思った燐はうろたえる。
「それより、監視役の人間を見つけることが大事だと思うけどな」
「あ、そうか。じゃあ、見つけに行こう!」
「待て待て待て待て」
燐が走り出そうとするので、肩を掴んでそれを止める長四郎。
「なんで、止めるの!」
「むやみ当らに探したって、見つかりっこねぇし。それは、警察に任せれば良いし」
「じゃあ、私達は何するの?」
「何するって、Captainを見つける事でしょ」
「心当たりがあるの?」
「さっきから、? が多いぞ。ラモちゃん」
「そんな事ないし。てか、私の質問に答えなさいよ!!」
「答えるって、何だっけ?」
長四郎がとぼけると、燐のストレートパンチが顔面にお見舞いされる。
それから数分後、一川警部、絢巡査長と合流した燐達。
「長さん、それどうしたと?」
そう問いかける一川警部の視線の先には、鼻にティッシュを詰めている長四郎が居た。
「色々とありまして・・・・・・」そう答えた長四郎の目に涙を浮かぶ。
「そんな事より、Captainを見つけるのを手伝ってください」
「分かったけど。ラモちゃん、見当がついているの?」
「それは」
絢巡査長の質問に答えるために、燐が長四郎を小突くと「あるよ」と長四郎は答えた。
「誰なんですか?」
「Captainのおじさんは、だれでしょぉ~」
「なんか、月光仮面の歌みたいやね」
「分かります? 一川さんなら、食いついてくれると思ってました」
『そんな事より、Captainは誰!!』
燐と絢巡査長の二重唱に、たじろぐ男性陣2人。
「長さん、Captainは誰なの?」
「多分、公安の」そう言いかけた時、「ここで何をしている?」と声を掛けられた。
4人が振り返ると、高倉がこちらを睨み付けていた。
「打ち合わせ」長四郎はそれだけ答える。
「打ち合わせ? 何のだ」
「裏切り者は誰ぇ~でぇ~しょぉ~っていう打ち合わせ」
「まだ、そんな事言っているのか」
「言いますよ。言い続けますよ」
「無駄な議論をしている時間があるなら、SUITOの捜索を手伝ったらどうだ」
「とか言って、簡単に見つかっている癖に」
「それはそうだが」長四郎の言葉に悔しそうに高倉は答える。
「あんたがやるべき事は、サクル・オリオ・クラウの監視役の構成員を探す事じゃないの」
「言われなくてもやっている!」
「あっ、そう」
「すいません。彼等をもう帰してすぐに、構成員の捜索にあたりますので」
一川警部は高倉にそう伝えると、長四郎達を連れてそそくさとその場から去った。
「危なかった~」長四郎は安堵する。
「ねぇ、あいつ声を掛けてくるタイミング、バッチリじゃなかった?」
一川警部と絢巡査長、長四郎に問いかける燐。
「私もラモちゃんの意見に賛成。やっぱり、裏切り者は公安の」
『旭』
絢巡査長が言う前に、長四郎と一川警部が声を揃えて言った。
「旭!? 高倉じゃないの?」
「ラモちゃん、絢ちゃんは短絡的すぎ。もう少し、人を疑わなきゃ」
長四郎の発言に少しムッとする女子2人。
「あたしも、怪しんどったけん。あー間違ってなくて良かった。間違っとたら、恥ずかしかったばい」
「それもそうっすね」一川警部の意見に賛同する長四郎。
「じゃあ、今すぐ旭を捕まえに行こう」
「まぁ、待て。せっかくならCaptainにもうひと働きしてもらおう」
長四郎は不敵な笑みを浮かべるのだった。
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