大物-26
「貴様! 森下先生になんて事を言うんだ!!」
瓜野は長四郎に突っかかるが、長四郎はそんな事を気にせず話を続ける。
「まず、この家の誰が殺されたかから話そう」
「人の話を無視するな!!」
「まぁまぁ」燐は食い下がる瓜野の肩を力強く握り、宥める。
「殺されたのはこの家の家政婦・水前寺真さん。ここで大事なのは家政婦というのは仮の姿であることだ」
「仮の姿だと?」森下はニヤニヤと笑い始める。
「スケベな事、想像してるな。スケベジジィ!!」長四郎はニヤニヤと笑いながら口から涎を出す森下にそう告げた。
「キっモぉ~」燐がそう言った瞬間、森下は眉間にしわを寄せ急に立ち上がると「もう一度、言ってみろ!! クソガキィ!!!」杖を振りかざし、燐を殴りつけようとする。
が、長四郎が燐を庇うように覆い被さり、森下の杖の餌食になる。
「長さん!!!」一川警部と絢巡査長は、大慌てで森下の身柄を押さえる。
「貴様ら先生に手を触れるな!!」
瓜野は身柄を押さえる刑事二人を引き離そうとする。
「てめぇは、すこっんでろ!!」
怒りの女子高生キックで瓜野はダウンする。
「大丈夫?」燐は身を挺して自分を守った長四郎を気遣う。
「大丈夫。大丈夫」と痛みを堪えながら、長四郎は森下の方を向いた。
「多分だが、今の流れで水前寺さんを殺したんじゃないのか? ジジィ」
「き、貴様!!」顔を真っ赤にさせて森下は再び杖で殴ろうとするが、一川警部にガッチリ押さえつけられ身動き一つ出来ず顔を真っ赤にさせる。
「殺したというのなら、死体は出たのか? ええ?」
「それをこれから出すのよ」
長四郎が目で合図すると、絢巡査長が森下の前に立ち令状を見せ家宅捜索の宣言をした。
「絢ちゃん。ありがとう」
「家宅捜索だと!? そんな事、私は許可せんぞ!!」
「ジジィ。あまり怒鳴るとくも膜下出血で倒れるぞ」
「貴様ぁ!!!」長四郎の忠告も無視して、怒鳴り散らす森下。
「ねぇ、早く水前寺さんの居場所を教えてあげたら。このジジィ、死んじゃうよ」
「ラモちゃんは優しいな。仕方ない。鑑識さん! 彼岸花が咲いている所を調べてみてください」
庭で待機していた鑑識捜査員に指示を出すと、まず音々が持っていた水前寺の私物に付いた臭いを警察犬に嗅がせ彼岸花が咲いている花壇に向かわせると、すぐに吠え出した。
「掘ってみてください」
長四郎に言われるがまま鑑識捜査員はその場所を掘り返す。
すると、50cm程の深さでスコップの先端に何かが当たった。そこから掘り返すのではなく土を払いのける作業をすると埋まっていた物が判明した。
それは、死体を移送する際に使用する納体袋であった。
鑑識捜査員が納体袋のチャックを開けると、水前寺真の死体が納められていた。
「死体、発見しました!!!」
「ありがとうございます」
鑑識捜査員に礼を言って、長四郎は振り返り森下を見る。
「無事にご遺体は見つかりました」
「私は何も知らんっ! 瓜野だ! 瓜野が殺した!!」
「ジジィ。人になすりつけるのは、無理があるぜ。こっちには目撃者が居るんだぜ?」
「目撃者だと? そんな物が何になる。貴様、私を誰だと思っている! 私は」
「日本の支配する大物フィクサーって言いたいんだろうけど、それも権力が弱まっている今、言われてもねぇ」燐はそう言って、権力を振りかざそうとする森下を嘲笑する。
「権力が弱まっているだとぉ~ 小娘の分際で戯けた事をぬかすな!!」
「んだと!? このスケベジジィ!!!」
燐は正義の鉄拳ロケットパン○を繰り出す前に長四郎が大慌てで止めた。
「おい、ジジィ。死体が見つかったんだ。観念しろ」
「私は、貴様に負けた訳じゃないぞ。それにな、貴様が連れ出したあの家政婦は今頃・・・・・・」
「おい! 音々さんに何をしたっ!!!」
長四郎が森下に掴みかかると、森下は長四郎の顔に唾を吐き勝ち誇ったような顔で笑った。
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