結社-18
絢巡査長は一人、警視庁の資料室で調べ物をしていた。
「う~ん」
しかめっ面でパソコンと睨めっこしていた。
ここ数年の組織対策犯罪課が担当していた事件について調べていた。
麻薬事件に絞って調べていたのだが、気になる事を発見した。
ここ二年、警視庁の麻薬事件の検挙率が急激に上がっているのだ。
前年比、120%も上昇している。しかも、その全てに関わっているのが室井室長だった。
如何にも分かりやすいといった感じで、解せないのだ。
「なんかなぁ~」
絢巡査長は出来すぎな構図に悶々としていた。裏切り者を調べるようにいった村内刑事部長の方が疑わしいとすら思う絢巡査長。
「この出来すぎな構図。裏切り者は誰?」
絢巡査長はそう言い、室井室長と村内刑事部長の経歴を洗い始める。
一川警部はというと、難波塚児の事件を担当する所轄署へと来ていた。
「いや~ どうも」
捜査員全員分の弁当を持参して。
しかし、捜査員の誰一人として挨拶することもなく、一川警部はただ一人突っ立て居るだけの人になるしかなかった。
「あ、澤くぅ~ん」
暇そうにパソコンを見つめる澤に声を掛けるが、返答はなかった。
「はぁ~あ」
一川警部はため息をつき、澤が座る椅子の前に立つと思い切り蹴り飛ばす。
「てめぇ! 何するんだよ!!」
「いや、ぼぉーっとしとったけん。大丈夫かなぁ~と思ってね」
「ふざけんなよ。おっさん」
澤は一川警部の胸倉を掴みかかろうとするが、綺麗な背負い投げで床に叩き付けられてしまう。
「ぐほっ!!」
背中に鈍痛が走り悶絶する澤に一川警部は「事件の捜査はどうなっとうと?」と尋ねる。
「犯人は浮渡布里子だろ。もうそれで送検の準備をしているんだ」澤は痛みを堪えながら答えた。
「送検の準備まで進んどうと。はいたぁ~」
頭をペチペチと叩き、困り顔をする一川警部。
「送検はいつすると?」
「明後日」
「それは、誰からの指示?」
「誰でもない。俺達の独断だ」
「そう」
一川警部は澤がスパイと繋がっている可能性があるかと思ったが、簡単には吐かないと踏みこれ以上、スパイについては問い詰めないことにした。
「彼女が殺したって言う物的証拠はあるの?」
「それは、これから取るんだ」
澤はゆっくりと身体を起こし立ち上がると、一川警部を一睨み取調室へと向かっていった。
一川警部はすぐさま長四郎に電話をかける。
「もしもし、長さん」
「はい。長四郎でぇ~す。どうかしましたか?」
「浮渡布里子、明後日、送検されるらしい」
「物的証拠は?」
「ないって。自白は取れたらしいったい」
「自白だけでとは、敵さんも相当強引ですね」
「そうやね。長さんは何か進展あった?」
「まぁ、奥さんがホライゾンでアメリカ製の柔軟剤を買ったっていう証言だけ取れたんですけどねぇ~」
「じゃあ、長さんの事務所で打ち合わせしたいんやけど。良か?」
「良いですよ。俺らも事務所に戻るんで、一時間半後にということで」
「ラジャー」
そこで通話を終了し、一川警部は絢巡査長にメッセージアプリで長四郎の事務所に集合と連絡して向かうのだった。
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