番外編~羅猛燐の事件簿EP.1.04~

 授業が終わってすぐに白子は、燐の席にすっ飛んできた。

「さ、調査を再開しましょう」白子は鼻息を荒くしながら燐に進言する。

「他にも心当たりがある人物でも居るの?」

「あと一人該当する人物が」

「そぉ、それは誰?」

「あの娘よ」

 白子の視線の先に居たのはダニエルと楽しく談笑している城島じょうしま こよみであった。

「その理由は?」燐は絶対に犯人ではないだろうと思いながら、質問した。

「城島さんは、ダニエルの事が好きみたいなの。それで、仲の良い私を目の敵にしているの」

「そ、そうなんだ」と答えながらダニエルに目を向けると燐の視線から消えるように話を切り上げて自分の席へと戻って行った。

 燐の疑いは益々、濃くなった。

 そんなこんなでその日は終わり、燐は長四郎に意見を求めるため熱海探偵事務所へと向かった。

 長四郎はクリスマスの調査に向けて絶賛、準備中であった。

「悪いけど依頼は受けられないよ」

 長四郎はバッグに一眼レフカメラやホッカイロを詰め込みながら、ソファーに座りミルクティーを飲む燐に話しかけた。

「失礼ね。少し道具を借りたいだけよ」

「道具? 余っている物なんてないよ」

「何かしらあるでしょう」

 燐はそう言いながら、探偵道具が入っている棚を物色し始める。

「あ、ちょい」そう言って止めようとする長四郎を燐は無言で蹴飛ばし棚を漁り続ける。

「これとこれ。借りるよ」

 燐の手の中には、盗聴器と隠しカメラ2つが握られていた。

「ダメって言っても持って行くんでしょ」

「うん!!」

 燐はハキハキとした返事をするのだった。

 長四郎から拝借した道具を使い、白子が怪しいという3人を調査したのだが何も得られず終業式を迎え冬休みへと入った。

 そして、25日のクリスマスを迎えた。

 白子はダニエルとのデートの為、○○―○ランドの入り口で待っていた。

 そんな白子を物陰から見つめる人物が居た。

「ねぇ、燐。ホントにダニエル君が犯人だと思うの?」一緒に監視しているリリは質問をした。

「名探偵の私を信じなさい。もし、ダニエルが犯人じゃなくても彼はあの人形の所在は知っているはずよ」

「そうなの?」

「そうなのよ。あ、来た」

 燐の言葉通りダニエルが緊張した面持ちで、白子に近づいていく。

「どうする。突撃する?」リリのその言葉に燐は首を横に振り、「デート後にしよう」と告げた。

 白子とダニエルが園内に入っていったので、2人は気づかれないように尾行を開始した。

 それから和気あいあいと楽しむ白子とダニエルそして、尾行していることを失念し燐達も楽しんでいた。

 5時間後、イルミネーションの前でいい雰囲気になる白子とダニエル。

「あ~楽しかったぁ~」

 燐は尾行しているのをすっかり忘れて、対象の前で大きな声を出してしまう。

「あれ? 羅猛さん」

「あ、しまった」リリに見つかってしまった燐はマヌケな顔をする。

「羅猛さんも来てたんだね」そう吞気に話しかける白子と対照的にダニエルは苦虫を嚙み潰したような顔で燐を見る。

「まぁねぇ~」

「それで、あの人形は見つかった」

 デート中なのに人形の事を尋ねてくれる白子。

「あったよ。ねぇ、ダニエル君」

 燐はそう言って、ダニエルを見るとダニエルは顔を引きつらせながら後退りする。

「はい、逃げようとしてもダメよ」リリがダニエルの背後に立ち、逃亡を許さないようにする。

「ちょっと、どうしてダニエルが私の人形を盗まないといけないのよ。何かの間違いよ」

「これを見てもそう言える?」

 燐はスマホを操作し、教室に仕掛けた隠しカメラで撮影した動画を見せる。

 その動画はダニエルの机周辺を撮影されたものであった。

 終業式の日、ダニエルは周囲を警戒しながら自分のバッグから人形を取り出し、白子の机に向かうのだが城島から声を掛けられすぐさま、バッグに人形を戻し会話を始めた。

「という事で」燐は深呼吸をし、ダニエルを指差してこう告げた。

「犯人は貴方よ! ダニエル!!」

 羅猛 燐はそう言いながら、犯人を指差した

 その場に居たリリ、白子の2人から拍手が鳴る。

「ごめんなさい」

 ダニエルは申し訳ないそうにコートのポケットから人形とプレゼント放送された小さい箱を取り出し、白子に渡した。

 白子は人形が自分の手に戻ってきたのとプレゼントが嬉しく満面の笑みで受け取る。

「どうして、僕が人形を持っていると」

「簡単よ。白子ちゃんが人形を盗まれたって言った時のダニエル君の行動そのものが、如何にも犯人ですと言わんばかりの振る舞いだったから。それで、マークしたらあっさり」

 燐の薄い推理を聞いたダニエルは一人頷いて納得したのかのように思えた。

「羅猛さんの推理は正しかったです。でも、この人形は盗んではいません。貸してもらったんです」

『貸したぁ~』燐とリリは声を揃えて驚く。

「はい。このキャラクターの人形を収集している母国の友達が来日する際に、この人形を見つけた事を自慢したくて。白子さんに話をしたら快く貸してくれて」

 燐とリリはが白子を見ると「そう言えば、そうだったかも・・・・・・」と答えるので2人揃って肩を落とす。

「ごめんなさい。私、早とちりしたみたい!!」

 白子はダニエル、燐、リリに迷惑をかけたので謝罪する。

「気にしないでください。怪しまれるような事をした僕も悪かったんです。それに」

「それに?」聞き返す白子。

「それにそんな白子さんが可愛くて好きです」

 ダニエルは白子に告白した。

 燐達もまさか、そんな場面に立ち会う事になるとは思わず「ひゃっ!」と声を上げ乙女心を出す。

「ごめん、ダニエル。私、大学生の彼氏いるから」

『え?』白子の思いもよらぬカミングアウトに三重唱を奏でる燐とリリ、ダニエルの3人。「これから彼とデートだから。プレゼントありがとう。じゃ」

 白子はそう告げその場から立ち去っていった。

「ダニエル君。これから私の家でクリパしよう」肩を落とすダニエルに燐はそっと声を掛ける。

「お断りします。ホストファミリーとクリスマスパーティーがあるので」

 ダニエルは燐の誘いを断り、ホストファミリーが待つ家へと帰っていった。

「燐。私も彼氏とデートあるから帰るね」

 リリもそう言って、その場から去った。

「結局、私一人・・・・・・」

 毎年恒例のクリスマスソングを耳にしながらクリスマスぼっちの燐は、1人寂しく帰宅するのだった。


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