第拾参話-過去

過去-1

 師走の警視庁は年末年始の警戒準備の為、忙しそうであった。

 だが、そんな忙しがしさとは皆無の部署があった。

 その部署は警視庁捜査一課の特別チーム命捜班である。

 この1年、命捜班は多くの事件を解決した?

 全ては、名探偵の熱海あたみ 長四郎ちょうしろう、事件を引き寄せる女子高生・羅猛らもう りんのおかげで事件を解決に導けたのだが。

「あー退屈やなぁ~」

 一川ひとつかわ 雅人まさひと警部は、自身が座る回転椅子をクルクルと回しながら呟いた。

「そうですね」あや 小町こまち巡査長もまた退屈そうにしながら相槌を打つ。

「来年の年始はゆっくりと過ごせると良いなぁ~」

「それ、どういう意味ですか?」絢巡査長は一川警部に説明を求める。

「絢ちゃんは知らんかったね。長さんと関わってからの3年は事件に追われてゆっくりと過ごせんかったとよ」

「へぇ~って事は、下手したら来年の年始は事件が起きるかもってことですか?」

「そ」

「それは嫌ですね」

「そうなの。もし、事件が起こるようなことがあればウチのオニが怒りそうで。怒りそうで」

 一川警部のオニと言うのは、妻の一川ひとつかわ れいのことである。

「ああ、奥さんって確か刑事だったんですよね?」

「誰から聞いたと?」

「ラモちゃんです」

「はいたぁ~そこまで漏れとるとか~」

「はい」

 一川警部が何故、ここまで狼狽えるのか。絢巡査長は知りたくなり次の質問をした。

「一川さん。奥さんとはどのようにして知り合われたんですか?」

「え?」部下からまさかの質問に驚きを隠せない一川警部。

「暇だから教えてくださいよ。教えてくれないなら、私が奥さんから直接聞きます」

 それは不味いといった顔で、渋々一川警部は口を開いた。

「オニと出会ったのは、長さんと出会った時でもあった・・・・・・」

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