有名-8
美雪は平然とした様子で仕事をこなしているのに対して、美雪のマネージャーの松坂は一生懸命平然を取り繕ってはいるのだが後輩を失った悲しみを隠し切れないといった様子であった。
そして、燐はこれ以上被害を拡大させたくないという思いで番組収録をする美雪を見守りながら犯人を探す為、周囲の人間を般若の形相でバラエティーの演者・スタッフを睨み付けていた。
そんな燐に美雪の警護を任せた長四郎はとういうと。
「どこかなぁ~」
スタジオの入口に置いてある収録番組とその収録スタジオが書かれていた掲示板を見ていた。
その目的は、ある人物に接触する為であった。
だが、その人物は長四郎が居るスタジオにはその人物が来る予定はなかった。
「SHIT!!」長四郎は悪態をつくと掲示板から離れて収録スタジオへと戻っていった。
音を立てないようスタジオに入ると、スタジオの演者は爆笑しながらVTRを見ていた。
「あの」
松坂の肩をポンポンと叩いて、長四郎は自分にへと気を逸らさせる。
「何でしょうか?」小声で返事する松坂に「少しお話が。あ、美雪さんの方は大丈夫だと思いますから。ラモちゃんもいますし」と説得して松坂をスタジオ内に併設されているレストランへと誘い出した。
レストランでコーヒーを注文した2人は、空いている4人掛けのテーブル席に着く。
「それで、私に聞きたい事とは」松坂から話を切り出してきた。
「栗栖さんについてです」
「やはり、あいつは俺の身代わりなって殺されたんでしょうか?」
「その可能性は高いと思います。松坂さんもそうお思いになるという事は、周辺で何か異変があったということでしょうか?」
「確信して言えることではないのですが、私自身も誰かに一時期ではありますが尾行されていたような感覚があったんです。でも、気のせいだと信じ切っていたんです」
「そうでしたか。栗栖さんが着ていた服についてなんですが、松坂さんがプレゼントしていた服ではないかと。確認してもらえませんか?」
長四郎は一川警部に頼んでいた栗栖が着用していた服の写真を松坂に見せた。
「これです。栗栖に渡した服は」
「失礼ですが、これと同じ服をお持ちではないですか?」
「えっ、どうしてそれを?」
「いや、松坂さんの知り合いとは言え殺されるには理由が無さすぎます。要は、人違いで殺されたというのが自分の推理なものですから。確実に人違いする理由として犯人は服だけで判断をし殺害したのではと」
「じゃあ、私が原因で殺されたという事になりますね」
長四郎は「そんな事はない」と言いたかったが、ここで何を言っても慰めにはならないだろうと思い何も言わずに項垂れ涙を流す松坂を見守ることしかできなかった。
一方、その頃収録を終えた美雪は共演者やスタッフ達に挨拶をしてスタジオを出て楽屋へと向かった。燐も当然、同行する。
楽屋へと戻った美雪はすぐ様、メイクを落として次の現場に向かう準備を始めた。
「2人共、どこ行っちゃったんだろ?」
燐はスマホを取り出して連絡しようと試みる。
「もう良いじゃない。次の現場はここのスタジオからそんなに離れていないから。私達だけで行きましょう」
「はぁ」
燐は美雪に言われるままスマホをしまい、美雪と共に楽屋を出た。
「こっちが次の現場に行くのに近い近道だから」
そう言って、燐をスタジオの裏口に誘導する美雪。
裏口を出ると、そこはスタジオに勤務するスタッフ専用の駐車場であった。
「行きましょう」美雪にそう言われ歩き始めたその時、後方から声を掛けられた。
「澤村美雪さんですよねぇ~」
燐と美雪が振り返ると、鉄パイプや金属バットを持った男5人組が立っていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます