返金-8

 エレベーターで目的のフロアに上がっていく奈緒と鉢合わせしないように燐は階段で目的のフロアへと向かって行く。

 燐がフロアの階に到着した頃には、奈緒の姿はなかった。

 多分、長四郎と同じ行動を取っているに違いない。そう踏んだ燐は、襲撃してきた男達が乗り込んでくるのを待つ為に身を隠せるスペースを探す。

 しかし、都合よくそんなスペースがある訳もなく、取り敢えず上階のフロアで身を隠す事にした。

 上階のフロアが空きフロアである事を確認済みなので、身を隠せるにはもってこいの場所であった。

「暑い・・・・・・」

 クーラーが効いてないフロアは灼熱の環境。

 ここに長時間滞在するのは危険であると燐は直感的に思い始めた頃、下のフロアから激しめな音が聞こえてきたので抜き差し差し足で階段を降りて行く。

 下のフロアが見える位置まで来たところで、男が吹っ飛ばされて出てきた。

「おおっ!!」

 燐はいきなりの事で、驚き変な声を出してしまう燐。

 吹っ飛された男は気絶していた。

「凄い~」燐は嬉々としながら、フロアに入っていく。

 フロアに入ると、奈緒は羽交い締めにされ身動きが取れない状態であった。

 多分、最初は勢いに乗り応戦できていたが徐々に形勢逆転の形となり、今の状況になったんだろうと燐は考えた。

「どうもぉ~」

 そう挨拶しながら、燐は近くにあったごみ箱を笑顔で投げつける。

 奈緒を殴ろうとしていた男の顔にごみ箱が当たった。

 その隙をつき、奈緒は両脇に居る男の脛を蹴り、拘束を解くと思いきり金的を蹴り上げる。

 男は余りの痛みに悶絶し、声も出せない状態になる。

「逃げますよ!」

「分かった!!」

 そこからの燐と奈緒のコンビネーションは素晴らしいものだった。

 次々と襲ってくる男達をなぎ倒す燐、そして、倒された男達にとどめを刺す奈緒。

 二人はこの勢いに任せて逃げるのだった。


 一週間後

「暑い・・・・・・」

 長四郎は今、Kuunhuberのピシャリ事、佐谷田さやだ 賢也けんやの尾行をしている。

 垂れてくる汗を拭い、動画撮影しながら歩くピシャリの尾行を続ける。

 ピシャリは金持ちKuunhuberとして売っており、その巧みな話術も売りの一つとしている。

 歩いている最中もずっと、カメラに向かって喋り続ける。

 金はあるので、自撮り方式ではなく撮影隊を組んで撮影しているので自分の尾行がバレないように気を張る。

「暑いし、気を張るし。あ~ 面倒くさいなぁ~」

 長四郎は切り上げようかとも思ったのだが、それを燐に知られたらとても怖いので仕方なく尾行を続けるのだった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る