御祭-18
「どう?」
明野巡査は珈琲の入ったマグカップを置き、燐に成果を尋ねる。
燐と明野巡査の二人は長四郎の事務所で、高校から提供してもらった防犯カメラの映像を確認していた。
「う〜ん。確かに国巳は映っているんだけど」
「だけど?」
「映ってはいるんだよ。でもね、肝心の物の受け取った後がないんだよねぇ〜」
「どういう事?」
「だからさ」説明するより見てもらった方が早いと思い燐は「見てて」と言って、動画を再生する。
そこには、荷物の授受が行われるロッカーに向かっていく国巳の姿が映されているのだがそこから一向に戻ってくることはなかった。
「戻ってこないね。変だね」
明野巡査は少し時間を遡らせて、他の生徒が段ボール箱を持ってロッカーに向かって行き数分後に戻って行く様子が映し出されていた。
「ね、この通り、普通は戻ってくるんだよ。でもね、国巳はというと」
燐は別の日の映像を出し、明野巡査に見せる。
その日もまた国巳はロッカーに行き、戻ってくることはなかった。
「気になるな」
燐と明野巡査の間に顔をぬっと出す帰ってきた熱海長四郎。
「うわっ!」
「きゃっ!!」
女子二人が驚く顔を見て、長四郎は笑い転げる。
「最低っ!!!」
燐は怒りを込めた拳を長四郎の顔に叩きつける。
「グゲっ!!!」
漫画のような垂直横跳びで長四郎は飛んでいった。
「ラモちゃん」
明野巡査はよくやったと握手を求め、燐はそれに答えて握手を返す。
「で、あんたは今までどこに居たの?」
「M78星雲」
「まだ言うか!」
ふざけまくる長四郎にとどめを刺そうと燐を「ラモちゃん。落ち着いて、落ち着いて」と言いながら、明野巡査は宥める。
「そんなことよりさ、良い所に目をつけたね。お二人さん。泉ちゃんが気づいたの?」
長四郎は歪んだ顎を矯正するようにガゴっと音を立てる。
「いえ、私じゃなくてラモちゃんが」
明野巡査はそう言って、鼻高々になる燐を見る。
「ラモちゃんが。少しは成長したじゃない」
「いつまで経っても成長しないヘボ探偵には言われたくないわ!」
「ひっどぉ〜い」
「そんなことより! 探偵さんは、この映像を見て国巳は荷物の授受をしていたと
思いますか?」
「そうねぇ〜 これから察するに共犯者がいるんじゃないか。俺はそっちの方が気になってな」
「共犯者? どういう事?」
「どういう事って、荷物を誰かと一緒に持ち運んでいるんじゃない? ちょっと、失礼」
長四郎は先ほど燐たちが見ていた映像を巻き戻して、別の生徒がロッカーに段ボールを持って行く所で再生した。
「段ボール見てみろ。こんな大きさの物どうやって持って帰るの?」
その生徒が抱えている段ボールは、引っ越し段ボールLサイズ(外径合計140cm以下)の大きさの物であった。
「こんな大きな段ボールを持ち帰るの? 彼、自転車通学じゃないでしょ?」
「え? じゃあ、自転車通学の人間が手伝ってこと?」
「ラモちゃん。考えが安直すぎだよ。国巳の親はな」
「モンペなんでしょ」
長四郎はなんでそれを知っているといった顔をする。
「私たちを舐めないでよね」
「舐めてはないですよ。ぺろ〜ん」と舌を出し入れして見せるつ長四郎。
「キモっ」
「うん、気持ち悪いです」と燐に賛同する明野巡査。
咳払いをして誤魔化し、長四郎は話を続ける。
「つまりは、毒親っぽい母親が手伝ったんじゃないかなと」
「でも、車を持っているかを調べないと探偵さんの推理が当たっているとは言えないですね」
「泉ちゃん。それはこれから調べるの」
「はい。すいません」
「泉ちゃんに当たることないじゃん」
「当たっていましぇ〜ん」
「二人とも喧嘩しないで。それで、探偵さんは今まで何を」
明野巡査ははぐらかされた疑問を長四郎に問うた。
「うん。国巳くんと接触してな。彼の口からホッバーを開発したという話を聞けたよ。それと、佐藤田さんから深中都姫ちゃんの情報も聞き出した」
淡々と答える長四郎に自分達より一歩先を調べていることに恥ずかしさ感じる女子二人であった。
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