行方-17

 コンテナに入れられて四十分が経過した頃、長四郎のコンテナの前に一台の車が止まった。車から毛布を被せられた裸足の女性が男に連れられ降りてきた。

 男がコンテナのドアを二回ノックした。

「はぁ~い。サザエでございまぁ~す」と長四郎渾身のモノマネで返事をすると、コンテナのドアが開いた。

「ふざけてんのか?」ドアを開けた男はここへ連れて来た男とは別の人間でありかつ、外国人で高級スーツを着用していた。

「滅相もない。銀座からよくお越しくださいました」

 男が連れて来た女の子をソファーに座らせながら、長四郎は本題を切り出した。

「お前、なんでそれを知っている?」

「何でって。ねぇ、あなた達有名だから」まともに答えない長四郎を警戒し、男は腰のホルスターから警棒を取り出して構える。

 だが、長四郎はそんなのお構いなしで話を続ける。

「ちょいと、ごめんあそばせ」

 女の子の手を取り腕を確認するのだが、女の子はそれに抵抗することなく心ここにあらず目が虚ろで虚空を見つめていた。そして、腕には注射痕があった。

「あ~あ。綺麗なお手手にな~にしちゃってくれてんの?」

「Fucking Crazy Guy’s.」

「あ? なんだって?」

 長四郎が男の方を振り向くと同時に、男が警棒を振り下ろしてきた。

「お、危ねっ!」女の子を庇いながら、警棒を華麗に避けるが次の一手がすぐに襲い掛かってきた。

 長四郎は真剣白刃取りで振り下ろされた警棒を受け止めて、がら空きになった男の腹目掛けて長四郎の蹴りが入る。綺麗に技が決まり男は吹っ飛んで壁にぶつかり後頭部を打ちつけるゴンっという鈍い音がコンテナの中に響き渡った。

「Hit!!」長四郎はガッツポーズを取ったタイミングで「大丈夫ですか!?」と明野巡査がコンテナに入ってきた。

「泉ちゃん。遅いよ」

「すいません。外で色々と」

 ドアの隙間から、刑事達がコンテナに監禁されている女性達が救出されると共に、監視役が検挙されている光景が見えた。

「ま、良いや。んじゃ、こいつ宜しく」長四郎は女の子と共にコンテナを出た。

 通報を受け現場に出動してきた救急隊員に女の子を預けて、現場から離れ一服している佐藤田警部補の元へと向かう。

「お疲れさま」佐藤田警部補は長四郎に缶コーヒーを差し出しながら労いの言葉をかける。

「どうも」

 缶コーヒーを受け取った長四郎はプルタブを開け、まだ暖かいコーヒーを飲む。

「で、これからどうする?」

「まぁ、本題の女子高生は救出できていないので。もう少し、探してみます」

 じゃじゃ馬娘の遠吠えが聞こえないので、長四郎は燐が居ないことを察していたのだ。

「佐藤田さん。イヴ・ウィンガードはこんな状況でも殺人をすると思いますか?」

「う~ん。日本市場を開拓しようと来日したわけだから、こんだけ邪魔したらなぁ~」

「やりますね。少なくとも俺が奴の立場なら腹いせにやります」

「探偵さん。意外とおっかないのねぇ~」

 平然とした顔で物騒な事を言う長四郎に目を丸くする佐藤田警部補であった。


 燐は監禁部屋でテレビを見ていると、いきなり部屋のドアが開いた。

「抵抗するのは諦めたようだね」イヴが話しかけてきた。

「それはどうかしら?」

 燐は隠し置いていたフォークを武器に、イヴに先制を仕掛けた。

 が、イヴはそんなことお見通しといった感じで燐の攻撃を交わして、燐の腕を掴みフォークを捨てさせるように腕を捻り上げ抵抗されないように身体に抱きつく。

「フゥ~ ハァ~」

 イヴは燐の匂いを嗅ぎ、興奮して見せる。

「気持ち悪いんだよ! 離せよっ!!」

「ああ、愛しい君を私のものにできると思うと」イヴはそう言いながら、徐々に呼吸を荒げ興奮していく。

 燐は身体を捻って何とか反撃に打って出ようするが、ガッチリホールドされているので逃げ出せない。

「さぁ、これから永遠に結ばれる儀式を挙げるんだ。お眠り」

 イヴはズボンのポケットから取り出したスタンガンで燐を気絶させた。

 ガクッと崩れ落ちた燐の身体をいやらしい手で撫でまわしなが、自身の股間に手を当てるのであった。

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