断言するピオン
シェーヴィル同盟の長老達との会話が終わってからしばらくした後、サイ達は客人用に建てられたテントに案内された。
「……それで、あの話をどう思う?」
サイは同じテントにいる仲間達に向かって話しかける。彼が言うあの話というのは、先程長老達と共に聞いた、板状の機械が話した宇宙の人々からの要求のことである。
「どう思うも何も、宣戦布告としか思えないだろう」
サイの質問にビークボッドが呆れたような表情で言い、その言葉はこの場にいるほぼ全員の気持ちを代弁したものであった。
惑星イクスへの帰還を望む者がいるのは理解できるし、その内のいくらかを難民として受け入れろというならまだ納得できる。
だが今日まで何百年とかけてモンスターや時には人間同士と戦いながら必死に開拓してきた国土を、今まで遠くから我関せずという顔をしてきた者達に一方的に寄越せと言われれば納得など到底できるはずがない。
実際、あの場にいたシェーヴィル同盟の長老達の数人は、板状の機械が話した宇宙の人々からの要求に対して怒りの表情を浮かべていた。
ビークボッドの言葉にジェラードが頷く。
「そうだな。シェーヴィル同盟じゃなくても、あんなふざけた要求をされたら怒るだろうな」
「でもそんなふざけた要求をされても『あんな話』を聞かされたら無視できないわよ」
ジェラードの言葉にマリーが呟き、彼女の呟きを聞いたサイ達は、シェーヴィル同盟の長老達から聞いたあの板状の機械、宇宙の人々からの要求がシェーヴィル同盟にやって来た経緯を思い出す。
シェーヴィル同盟の長老達の話によると、ある日、超巨大ゴーレムトルーパーの上にあって移動をしていたこの街に流れ星が降ってきたそうだ。流れ星は宇宙の人々が送ったカプセルであり、カプセルはシェーヴィル同盟の街に激突する寸前に自ら空中に停止してらしい。そしてそのカプセルの中にあったのが例の宇宙の人々から要求を録音した板状の機械であった。
「もしその流れ星が爆弾だったらシェーヴィル同盟は一溜りもなかったわね。……今の話だけでも宇宙の人達が私達よりずっと高い技術を持ってるのが分かるわ。今回シェーヴィル同盟が私達他国にこの話を伝えたのは、要求を断ってもし戦争になったらと不安になったからでしょうね」
つまり、高い技術を持つ宇宙の人々と戦って私達が負けたら次の標的はお前達だ。それが嫌だったらこの問題の解決に協力しろ、と。
暗にシェーヴィル同盟の本音を告げるクリスナーガの言葉に、ブリジッタがため息と共に呟く。
「それだけの力があるのでしたら、暗黒領域のモンスターを退治してそこで暮らせばいいのに」
「いえ、それは無理だと思いますよ」
ブリジッタの呟きを無理だとはっきり断言したのはサイの隣に立つピオンだった。
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