モンスターの襲撃の真相
「ランー。これ、知ってるー?」
サーシャが蜥蜴のモンスターを撃退してから数日後。彼女とアースレイ、そして王都にいるはずのランは、南の砦の近くにある平原に来ていた。
サーシャ達三人の前には鋼鉄でできた建物にも乗り物にも見える奇妙な存在があり、サーシャがそれを指差してランに訊ねると、ランは苦い顔となって頷く。
「……うんー。知ってるー」
「やっぱり知ってたんだー。ランに来てもらって正解だったよー。……ところで今のは誰のマネー?」
今から数日前、砦の兵士からの報告を受けて初めてこの建物にも乗り物にも見える奇妙な存在を見たサーシャは、これがフランメ王国をはるかに上回る技術力で作られた物だと理解すると、ランなら何か知っているかと考え砦の兵士に王都にいる彼女を迎えに行ってもらったのだ。そしてその予想は見事に当たっていて、サーシャとランの会話を聞いていたアースレイは興味深げにランに話しかける。
「知っているってことは、これはランちゃんの『故郷』で作られたってこと? 一体これは何なんだい?」
「アッ、ハイ。これは私の故郷で作られた宇宙船……惑星イクスと宇宙にある居住空間を往き来するための乗り物なんです」
『『……!?』』
ランがこの建物にも乗り物にも見える奇妙な存在、宇宙船について説明をするとサーシャとアースレイは驚きで目を見開いた。二人とも宇宙とそこにある居住空間のことは知っているのだが、実際に宇宙で作られたものを目をすると驚かずにはいられなかった。
「宇宙に行けるなんて凄いねー。……でもー、このウチュウセンだっけー、何か壊れてないー?」
宇宙船を興味深げに見るランであったが、彼女の言う通りここにある宇宙船は半壊しており、とても動くようには見えなかった。それはアースレイも同感だったようで頷く。
「そうだね。それに以前この中を調べた時、大量の血痕と、人と猛獣が争ったような跡が見つかったんだけど……ランちゃんは何か知らない?」
「……そう言えば、以前フランメ王国でモンスターの捕獲を行う予定があるって聞きました。近くにいて都合がつく人は捕獲作業を手伝うようにという連絡も以前ありました」
『『……』』
アースレイに聞かれてランが以前聞いた話を思い出しながら話すと、サーシャとアースレイが顔を見合わせた。
「もしかしてー、砦を襲った蜥蜴のモンスターってー」
「この宇宙船に捕らわれていたのが逃げ出したやつかもしれないね」
南の砦を襲った三体の蜥蜴のモンスターは宇宙船よりもずっと大きかったが、蜥蜴のモンスターは何かを食べる度に脱皮をして巨大化するのを、サーシャは直に見ていたしアースレイも報告で聞いている。
蜥蜴のモンスターは最初、宇宙船の中で捕獲できるくらいの大きさでランと同じ宇宙から来た人々に一度捕まり、そこから逃げ出した後に大きくなっていったのではないかと、サーシャとアースレイは考えた。そしてこの宇宙船の周囲で一切の動物や植物が見られないことから、二人の予測は当たっているのだろう。
「迷惑な話だよ、本当に。とにかく砦の兵士達にもう一度、蜥蜴のモンスターの仲間がまだ残っていないか、そしてこの宇宙船に乗っていた生き残りがいないか調べてもらおう。ランちゃんもここに残って手伝ってくれないか?」
「分かりました」
もし宇宙船に乗っていた生き残りがいれば、ランがいた方が話もしやすくなるだろう。ランもそれを理解しているのでアースレイの頼みに頷いた。
そしてサーシャ達が砦と宇宙船の周囲の探索を終えて、王都へ帰ったのはこれから数日後の話であった。
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