アースレイとの会話

「いや、分かっているんだよ? この砦を襲ったモンスターがかなり厄介で、サーシャちゃんのお陰で兵士の皆が助かったことは。それでもちょっと無茶しすぎだよ」


 サーシャとドラトーラが三体の蜥蜴のモンスターを全て倒してからすでに一日が経過した。そして現在彼女は砦の一室で、珍しく困った表情をしているアースレイから軽いお叱りの言葉を受けている最中であった。


 昨日の戦いの後、一先ず周辺に他のモンスターがいないか確認したサーシャは、自分が助けた砦の兵士達から感謝の言葉を受けながら砦に入った。それから感謝はしているが同時に疑惑と恐怖の感情を抱き複雑な表情を砦の責任者に、王都を出発する時に文官から手渡された身分を証明する書類を渡すと、砦の責任者は即座に敬礼をしてサーシャを砦で最も上等な部屋、今いるこの部屋へと案内した。


 サーシャが砦の責任者に渡した書類には彼女の身分を証明する文章だけでなく、他のゴーレムトルーパーが到着するまで砦に待機しておくようにという彼女宛の伝言もあった。それに従いサーシャは案内された部屋で一晩を過ごすと、今日の朝にハンマウルスを全速力で走らせたアースレイが砦に到着して、今に至る。


「アースレイさん、ごめんなさいー」


「……ううん。違う。君は悪くないよ」


 サーシャが頭を下げて謝るとアースレイは一拍置いてから首を横に振った。


「今のは僕達の愚痴さ。僕達もサーシャちゃんの立場だったら同じことをしたし、サーシャちゃんが取った行動は正式な軍人だったら当然のことだよ。でも君はまだ士官学校の生徒、正式な軍人じゃない。人の命の責任を取る必要もないし、ろくに訓練もしてないのにモンスターと戦うなんて無茶をしなくてもよかったんだ」


 サーシャの兄のサイも、ドランノーガを手に入れてすぐに、初めての運転の時にモンスターの大群と戦った。しかしサイの時には隣にアドバイスをしてくれるピオンがいたし、兄が無茶な戦いをしたからと言って、妹も無茶な戦いをしてもいいという理屈はない。


 サーシャに話しかけるアースレイは真剣な顔をしていて、そこから彼が真剣に彼女を心配しているのが分かった。


「ゴーレムトルーパーを持っている君は、大勢の人達を守れる力と義務があって、その事を正しく理解している。……でもだからと言ってあまり無茶はしたら駄目だよ?」


「はいー。分かりましたー」


「……うん。分かってくれたらいいよ。それと遅くなったけど、砦の救援をしてくれて本当にありがとう。お陰で助かったよ」


 アースレイは素直に返事をしてくれたサーシャに頷いた後、モンスターを倒して砦を救ってくれたことに礼を言う。するとその時、二人のいる部屋のドアから誰かがノックする音が聞こえてきた。


「どうぞ」


「失礼します」


 アースレイが返事を聞いて部屋に入ってきたのは、この砦の責任者だった。


「トールマン准将、サーシャさん。おくつろぎ中のところ大変申し訳ありません。実は砦の周辺の調査をしていた兵士から、奇妙な建物……というか乗り物みたいなもの見つけたと報告がありました」

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