二度目の忠告

「あ、あの……。ザウレードがマリーさんのお父様の仇というのはどういう事ですか?」


 デオンティーヌに話しかけたのはザウレードの現在の操縦士であるブリジッタだった。自分の機体となったゴーレムトルーパーが自分の仲間の父親を殺したと聞かされたブリジッタの顔色は悪く、そんな彼女にデオンティーヌは視線を向ける。


「貴女は?」


「私はブリジッタ・アックア。アックア公国の公女で、その……今はザウレードの操縦士をしています」


「っ! そう、貴女がザウレードの……」


 ブリジッタがザウレードの操縦士であると知ったデオンティーヌは、彼女から視線を逸らして小さな声で答える。


「先程の言葉通りの意味です。黒竜盗賊団が、ザウレードがいなければマリーのお父様は死ぬことはなかった」


「そんな……!」


 デオンティーヌの言葉にブリジッタは再び絶句して、そこにマリーが話しかける。


「隊長、もうその辺で。私のことなら気にしないでください。確かにザウレードを使用すると聞いた時は驚きましたが、今はもう大丈夫ですから」


「……そうですか。マリー、貴女がそう言うのであれば私には何も言うことはありません」


 デオンティーヌはそう言うとサイ達に背中を向けて一度も振り返ることなく自分のゴーレムトルーパーへと歩いていく。そしてその後ろ姿に声をかける者は一人もいなかった。


「マリーさん……。どうして言ってくれなかったのですか?」


「これは私自身の問題なのでいう必要がなかっただけです」


 自分達から去っていくデオンティーヌの背中が小さくなったところで、ようやく我に返ったブリジッタがマリーに話しかけるが、マリーは彼女の方を見ることなく答える。


「それと、隊長はああ言っていましたけど私のお父様を殺したのは、ザウレードと共にお父様が守る砦に攻め落とした黒竜盗賊団の団員です。だからザウレードが私のお父様を直接殺したというわけではありません」


『『………』』


 マリーはそう言うのだが、ザウレードがいなければ彼女の父親が守る砦は攻め落とされることはなく、父親も死ぬことはなかっただろう。そう思ったのはブリジッタだけでなくサイ達も同じで、彼女達はマリーに何も言うことができなかった。


 しかしマリーは自分の過去を知り、何も話せずにいるサイ達に気付かないフリをして、やはり顔を見ようとしないままブリジッタに話しかける。


「ブリジッタ様。私は以前言いましたよね? ザウレードは多くの人々の悲しみと恨みを背負っていると。その機体に乗る以上は今日みたいなことは避けられません。それだけは覚悟しておいてくださいね」


「……はい」


 忠告をするマリーにブリジッタは小さな声で答え、それを聞いたマリーは自分達が乗っていた馬車に戻ろうとする。


「サイ。『倉庫』の異能でゴーレムトルーパーを収納しておいて、まずは首都に向かいましょう」


「ああ、分かった」


 サイが四体のゴーレムトルーパーを異空間に収納すると、合同部隊は再びソル帝国の首都へと向かう。しかしその足取りは心なしか重いように見えたのだった。

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