ザウレードの罪
「そんな……!? これは……!」
サイが異空間からドランノーガを始めとする四体のゴーレムトルーパーを現実の世界に出現させると、それまで優雅に笑みを浮かべていたデオンティーヌが驚きのあまり目を見開いた。しかしそれは珍しいサイの「倉庫」の異能の力に驚いたというものではなかった。
デオンティーヌの視線の先にあるのは四体のゴーレムトルーパーの一体、黒に限りなく近い灰色の巨像ザウレード。それをしばらく見た後、彼女は慌てた様子でサイ達へと振り返る。
「あ、貴方! 何でこの機体がここにあるのですか!?」
よほど驚いているのか、デオンティーヌは少し口調を強くしてサイに問い詰める。その突然の彼女の変化にサイの方も驚きながら何とか答えようとする。
「な、何でと言われても……。このザウレードは以前、俺が黒竜盗賊団を倒した時に回収したもので……」
「その報告なら私も聞いています! 私が聞きたいのは何故ザウレードが合同部隊に使用されているのかということです!」
「それはフランベルク三世陛下とバルベルト陛下の決定だからです」
サイの言葉を遮って叫ぶデオンティーヌに答えたのはピオンだった。彼女は自分の主人に失礼な態度をとるデオンティーヌを目を細めて見ながら、ザウレードが合同部隊に使用されている理由を説明した。
「各国の一般の国民には今だに黒竜盗賊団の壊滅を知らなかったり、黒竜盗賊団の復活を望む者がいるそうです。だからザウレードを合同部隊で使用することで黒竜盗賊団の壊滅をアピールすると同時に、ザウレードと元の持ち主であるフランメ王国の汚名を返上するというのがフランベルク三世陛下とバルベルト陛下の考えです。ちなみにこれはソル帝国の許可も取っていますから」
「そんな……!」
ピオンにザウレードを使用する理由を説明されたデオンティーヌを顔を青くしてそう呟くことしかできなかった。
確かにザウレードは黒竜盗賊団に使用されていた頃は世界各国を荒らし回り、特にこのソル帝国に大きな被害を出していて、それが合同部隊に使用されると知ったら驚くのも無理はないだろう。しかしそれでもデオンティーヌの動揺の度合いはそれだけではないように見えた。
「……………マリー」
デオンティーヌはしばらく絶句した後、やがて心配するような顔となってマリーを見る。
「貴女はそれでいいのですか? この忌まわしい機体と共に行動しても?」
「………それが任務ですから」
マリーはデオンティーヌの質問に彼女から目を逸らして答えるが、その姿は更にデオンティーヌの心配させた。
「ザウレードは……貴方のお父様を殺した仇なのですよ?」
『『……………!?』』
デオンティーヌの言葉にマリーを除くこの場にいた全員が言葉を失った。
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