ソル帝国の操縦士
「一体近づいてくる?」
サイを始めとする合同部隊の隊員達を出迎えに来たソル帝国の五体のゴーレムトルーパー。その中央に立っていた一体のゴーレムトルーパーが近づいてきて、サイ達の馬車の近くまで来ると動きを止め、下半身の馬の胴体にある操縦室から一人の操縦士が降りてきた。
ゴーレムトルーパーから降りてきた操縦士は、控えめだが気品が感じられる装飾の施された純白の軍服を身に纏った二十代くらいの女性だった。
「へぇ……。綺麗な方ですね?」
「そうだな。それに胸も大きい……」
「うむ。あの胸は無事だ」
「軍服の上からでも分かるいい巨乳だ」
女性の操縦士を値踏みするような目で見たピオンが言うと、サイとビークポッドにジェラードの三人も同意する様に頷いて言うが、三人の見ている先は少し違うみたいだった。
ピオンが言う通り、女性の操縦士はまるで芸術品のように顔立ちが整っており、どこかの王族の姫、あるいは王妃や女王と言われても納得してしまいそうな威厳を感じさせた。そしてサイ達が言う通り、その美貌の下には豊かな巨乳が軍服を下から限界まで押し上げていて、女性の操縦士が歩く度に震えて見せた。
サイ、ビークポッド、ジェラードの三名……いいや、巨乳好きな馬鹿一号と二号と三号はこんな場面でも自分の欲望に忠実であった。
「貴方達! 馬鹿な事を言わないで! 無礼でしょう!?」
サイとビークポッドとジェラードの言葉に当然というかマリーが声を上げる。しかしこの時の彼女の表情はいつもよりも強い怒りが浮かんでいて、それに気づいたブリジッタがマリーに話しかける。
「マリーさん、一体どうしたのですか? あの方は一体どなたなのですか」
「……あの方はデオンティーヌ様。私が所属している皇帝陛下直属のゴーレムトルーパー部隊『大いなる光』の隊長よ。公爵の位を持っていて、皇帝陛下の血族でもあるわ」
『『……………!?』』
マリーの口から女性の操縦士、デオンティーヌが予想以上の大人物である事を知り、マリー以外の全員が驚きの表情となる。そうしている間にデオンティーヌはサイ達の側まで近づき、マリーに話しかける。
「久しぶりですね、マリー?」
「はい、隊長! 今回は合同部隊の任務の為にこうして帰って参りました!」
「ええ、ご苦労様です。アックア公国からここまで予想以上に速い行軍でしたが……」
ソル帝国流の敬礼をして返事をするマリーに、デオンティーヌは満足そうに頷いてみせた後、周囲を見回した。
「マリー? 貴女達のゴーレムトルーパーはどこにあるのかですか?」
「はい。私達のゴーレムトルーパーは、こちらにいるサイ・リューラン少佐の異能によって異空間に収納しています」
「まあ、そうですか」
マリーの言葉にデオンティーヌはそこで初めてサイの方を見る。
「貴方がサイ・リューラン少佐ですね。お噂は聞かせてもらっております。私はデオンティーヌ。ソル帝国のゴーレムトルーパー部隊『大いなる光』を率いている者です。どうぞよろしくお願いします」
「あっ、はい。こちらこそどうぞよろしくお願いします」
笑みを浮かべて挨拶をするデオンティーヌに、サイも少し緊張しながら挨拶を返す。
「それでリューラン少佐? いきなりで申し訳ありませんけど、マリーが今言った貴方の異能がゴーレムトルーパーを収納したという話は本当でしょうか? もしそうならここで出すところを見せてもらいたいのですが」
「ええ、構いませんよ」
デオンティーヌの言葉にサイは頷き、二人の会話を聞いていたマリーが急に顔色を変える。
「っ!? サイ! ちょっと待っ……!」
マリーはサイを止めようと声を上げるが時はすでに遅く、異空間に収納されていた四体のゴーレムトルーパーの全てがデオンティーヌの前に現れた。
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